リレーコラムについて

エガミの幻の食卓 その三

江上隆夫

島のおやつは駄菓子屋にもあったが山にも豊富にあった。
グリコも買うが、子供らは採取生活。ほとんど、縄文人。

春はへびいちご、梅雨時はやまもも、夏は畑からもいだトマト、きゅうり。
秋はあけび、しいの実。秋から冬だったかな、椿の花の蜜・・。
盗んだサツマイモ(ごめんなさい)。あ、グミとか栗もあった。

坂だらけの島の道を上へとたどると段々畑があり、
そこを越えていくと背の低い広葉樹だらけの一帯。
その辺がわれわれの採取場所。おやつ売り場。

ポケットにビニールを入れて、
昭和の縄文人も8000年前の縄文人と同じく
隊を組んで意気揚々と目指すのである。

しかし、ひざ下は藪ですり傷だらけになり、
服は訳のわからない草の実がまだらにくっつき
ズックグツは泥で汚れまくる。

当然、苦労がまったく報われないこともある。
泣くね。お袋にどこで汚したの、となじられ
祖父に剣道の稽古になぜ来なかったと詰問されることを
承知で出かけたんだから。

でも、その苦労も見つかれば、OK。言うことはない。
贔屓は、やまももと、しいの実。

やまももとは言っても1.5〜2cmくらいの鮮やかな赤い色の実。
素朴な甘みと香りの果実である。

実は、やまももは東京都内にもけっこう街路樹として植えられいる。
結婚したてのころ、近所の道路にやまももの木を見つけて、
下を通る人に怪訝な顔をされながら洗面器いっぱい採ったけど、
排ガス臭くてとてもじゃないが食べられなかった。

いまでも、街路樹のやまももの実が
熟れおちて道路を汚しているのを見ると
懐かしいような、勿体ないような妙な気分になる。

しいの実は、どんぐりを一回り小さくした感じ。
いま思えば、できそこないのカシューナッツのような味だったかな。

やまももも、しいの実も貴重に思えて
だいじにだいじに食べていた。

しいの実、30数年食べてない。

あ、見てもいないや。

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