リレーコラムについて

戦い済んで、その後に?

加藤忠生

きのうの続き。黒須田先生の話。
麻雀に戦い疲れて朝となる。終わると雑談になる。
 「前から考えていたことだが、コピーライターの旅行会を
  やろうと思う。お前のいるアサツーは社員旅行というのがあるのだろう。
  社長が浴衣など着て、本日は無礼講で、等とあいさつして。」
先生、それって森繁の映画ですよ。
 「大勢で一緒のバスに乗って温泉に行く。ワイワイ、ガヤガヤ。
  それが縁で結婚する者もいる。俺の講座に通ってくる若者たちの
  会社は5〜6人のプロダクションが多い。
  社員旅行をしても、少人数ではツマラナイらしい。
  だから、皆に声をかけて、バス旅行をしよう。
  全員お揃いの浴衣を着て、麻雀もできるし。」
        ・
こうして始まったのが「黒須田旅行会」
幹事はアサツーの、井上さんと片桐さん。
あれ、日暮真三さんだったかな。忘れちゃった。
場所は伊豆の大沢温泉。六本木の日産ビル前に集合。
バス2台。7〜80人くらい集まった感じがする。
共通の人脈は先生一人。
ライター、デザイナー、近所の人、高校時代の友人などなど。
温泉に入って、宴会して、翌日はソフトボール。
往きのバスと違い、帰りのバスの中は全員10年来の友達になっている。
素敵なアイデアだと思った。
当時の広告界の若いパワーが集まっていた。
日暮さん、高田さん、糸井さん、仲畑さん、
名前を挙げればキリがない。
数年後、みんな広告界での中心的役割を担っていく。
三井浩さんは、皆のマドンナ千賀子ちゃんと結婚、
今では大きな子供もいる。
そうそう、作家の林真理子さんも参加していた。
        ・
旅行会で思い出した事がある。
先生が話してくれた「森永」での事である。
伝聞だから、正確ではない。大筋はこうである。
戦後、地方の子供たちが東京へ修学旅行へ来る。
初めて汽車に乗る子供もいたくらいである。
そうした時代、経済的理由から、参加できない子供もいる。
そこで森永は、渋谷の大橋というところに、森永修学旅行会館という
宿泊施設を造った。汽車賃までは無理だが、宿泊代は格安にする。
一人でも多くの子供が参加できるようにと。
いい話ではありませんか。
こういう話を聞くと目の奥が熱くなる。
もちろん、森永だって企業である。そこには、シッカリとした計算がある。
泊まった子供たちは、森永のファンになってくれると。
ブランド作りって、こういうことなんですね。
        ・
黒須田旅行会は、先生が加齢のため入院するまでの20年余り続いた。
この春、日暮さんが還暦となるということでパーティーを行った。
バス旅行をまたやろうよ、という声が挙がった。
お互いの頭髪の薄さと、女性たちのウエストを見て、
その声は消えていった。

次回は、先生の先生たちの話。

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