広告以外の世界で、コピーやプランニングで人に喜ばれる話(その3)
武田斉紀
みなさん、こんにちは。
引き続き、「広告以外でもコピーやプランニングの力で喜ばれる世界があるんです」というお話の第3弾です。
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●今年、ある会社が上場しました。まだ若い経営者です。
●上場企業の経営者となったBさんは、サラリーマン家庭に生まれましたが、子供のころから「いつかは起業」を夢見ていました。大学を卒業し、就職して数年。起業の夢を持つ友人と毎月集まっては、いろんなビジネスの可能性を探り、夢を語り合っていました。「いつかこのメンバーで一緒に会社を作ろうな」と。
●しかし、すぐに会社を辞めたのは彼だけでした。マンションの一室のような事務所で、一人からのスタート。一年ぐらいして仲間もできましたが、机を並べたらスペースがない。毎晩仕事で遅くなると事務所に泊まるのですが、机の下に丸くなって寝たそうです。
●そんなBさんにお会いしたのは、会社も軌道に乗り始めたころ。私はリクルートに在籍していて、求人広告の制作ディレクターとしてでした。どんな人に来てほしいか、これから会社をどうする計画なのか。Bさは最初はそんな話を滑らかに、嬉々としてしゃべっていました。取材されることを楽しまれているようでした。
●しばらくお話をうかがっていた私ですが、どうしてもわからない点が一つ浮かんできました。「ところで社長は、どうして起業しようと思ったんですか?」途端に、Bさんさんは黙ってしまいました。社員約30名。求人広告を出せるほどにまで成長してきたものの、自分自身の中に「俺がやりたかったことは何だったか」と迷いが生まれていたようです。
●私は、昔のことをうかがいながら、Bさんがそもそも創業に至ったまでにあった事実と、気持ちの変化を一つひとつ掘り起こしていきました。そして、ある一つの事実とそのとき感じた気持ちに思い至った時、Bさんの表情がにわかに明るくなりました。
●別れ際、Bさんが言いました。「武田さん、今日はとてもいい時間が過ごせました。迷っていたんですけど、目が覚めました。ありがとうございます。来週月曜日の朝のミーティングで、全社員を集めて話をしようと思うんです。なぜ自分がこの会社を作ったのか、そして自分が何を実現したいのかを話します。共感する人も、違うと思って去る人もいるでしょう。でもいいんです」。
●そしてBさんは「それとお願いなのですが」と続けました。「武田さんも来てもらえますか、一緒に私が話をするのを聞いてもらえますか」。
●翌週の月曜日、午前8時30分。Bさんの周りに怪訝な顔をした社員が全員集まりました。Bさんは私をみんなに紹介します。そして、先週私と話をしたことで、創業の思いを新たにしたことを、静かに語り始めます。
●私は、最初Bさんを見ていましたが、やがて社員の表情を順番に追っていました。真剣に聞き入っている人もいる一方、話半ばで聞いている感じの人もいました。
●2週間ほどして、Bさんの創業の思いをそのまま紙面にした求人広告を見て、共感してくれた人がたくさん採用できたとの連絡が来ました。
●それから数年。社内事情でその会社の担当を離れてしまった私は、独立の挨拶に電話をしました。Bさんが電話に出て言いました。「あの時に書いていただいた広告のコピー、ホームページで使わせてもらっています。勝手にすみません」。
●久しぶりにお会いしたBさんは、当時の何倍もの従業員を抱える企業の経営者の顔になっていましたが、創業した時の気持ちを今でも忘れないようにしているのだとすぐにわかりました。
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(やばい、12時を過ぎてしまった・・・では、また明日(今日?)。)
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