リレーコラムについて

あげんして、こげんして。

大曲康之

今日は、方言CMのことを書きます。

去年、鹿児島のある製菓メーカーの仕事をしたんですが、そ
れは「鹿児島が本場のアイスクリームを、福岡で売る」とい
うヤツで、CMに鹿児島弁の会話があるのですね。で、完成
して初号試写をしたところ、「鹿児島弁が不自然だ」という
意見を、雨アラレと(古いなあ)浴びせかけられたのです。
こっちとしては、もちろん鹿児島弁の特殊性はよく知ってい
たので、鹿児島から出てきて3ヶ月の若いナレーター志望の
青年にやってもらったのですけど、僕には完璧な鹿児島弁に
聞こえたのですね。で、調べてもらったら、その青年は、鹿
児島市内じゃなくて県内のちょっと北のほう(クルマで1時
間弱ぐらいの)の出身で、それが「市内語」スピーカーたち
には「不自然な鹿児島弁」に聞こえたというわけでした。
(結局、ナレーションは、録り直しました。)

僕が育ったのは、筑後川という九州一の大河の流域の佐賀県
側で、高校は、対岸にある久留米市の明善高校という世界一
の高校(僕には)です。この久留米市あたりでは「どう、こ
う、そう、」という副詞のことを、「どげん、こげん、そげ
ん」というのですね。たとえば、「どうしようか?」という
のを「どげんしょうか?」という感じです。

で、先ほどの「クルマで・・分」の話になるのですが、その
久留米市からクルマで30分ぐらいの佐賀市に行くと、それ
が「どがん、こがん、そがん」になるのですね。

さらにいうと、実は、その久留米市と佐賀市の間の農村地帯
では、その中間的形態というか、「どぎゃん、こぎゃん、
そぎゃん」という地域があるのです。(汚い音ですが、ウチ
の両親は、このグループです。)
つまり、「どげん圏」の久留米市を出たクルマは、筑後川を
渡ってすぐ(5分ぐらいで)「どぎゃん圏」に突入し、さら
に15分ぐらい走ると、もう「どがん圏」との境目の神崎町
に入っちゃうというわけです。

…話が細かくというか、九州の人にしか分からないレベルに
なってしまいました。要するに、そのくらい方言というのは
細かい地域差があるということを、言いたかったのでした。
で、よく東京のメーカーなんかが、エリアマーケティングと
かいう言葉で、ご当地方言CMを作ったりするのですが、だ
いたいにおいて、地元の人には「なんかヘンな方言!」とか
「地域に媚びてるよね!」とかバカにされてるんですよね。

ということで、本日の結論は、「クルマで30分走ると、言
葉が変わる」と「方言CMは、失敗しやすい」でした。

(追伸)
ちなみに、佐賀弁で「どうするべきなんですか?」というの
は、「どがんせんばと?」って感じで、久留米弁だと、
「どげんせにゃんと?」です。早口でこういうヤツを言われ
たら、「は?」というリアクションになりますよね。

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