リレーコラムについて

父に先を越されたTCC。

前野岳允

僕にはまだ内緒にしていることがあります。
今度は友だちじゃなく、
仕事関係の人たちに言っていない話です。
なんとなく言い出せないまま、
今日まで来てしまいました。

で、何を内緒にしているかというと、父のシゴトです。
別にスジモンじゃないし、もちろんオカマでもありません。
じゃ、隠すことないじゃないかと思うかも知れませんが、
やっぱり言えないのです。

というのも、僕の父、
役者をやっているのです。
そうです。ヤクシャです。アクターです。
もうトシもトシなんで、さすがに芝居の出演は少なくなり、
声優業が多くなってきましたが、まだ現役でがんばっています。

俳優や声優って、
広告やCMの仕事と簿妙にからむ職業なんで、
だから言いにくいんだろうなと思います、きっと。

いや、ちがうかなぁ。
本音を言うと、いちいち説明するのがめんどくさいっていうか、
なんかイヤなんですよね。うまく説明できないんですけど。

子どものときも、
自分から言うことはありませんでした。
何かのきっかけで知ったクラスメートに
「何に出てるの!?」って目を輝かせて聞かれると、
なぜかむしょうに腹が立ったもんです。
先生にまで、聞いてくるヤツがいましたからね。

それなのに去年、何を血迷ったか、
会社関係の人たちに言ってみたことがありました。
自分なりにふんぎりつけて言ったつもりだったのですが、
冗談として受けとられ、すぐにめんどくさくなり、
そのまま冗談として終わらせました。
やっぱり言わなきゃよかったと、すごく後悔しましたね。
父親にあやまりたい気持ちになったりして、後味わるかったなぁ。

と、いちおう親思いのふりをしてみるものの、
本当のところ、僕も父親の仕事にあまり興味がなくて、
出演作もそんなに知らないんです。
北斗の拳とか、おいしんぼとか、けっこうやっていたみたいですけど、
アニメなんてまったく興味なかったんで見たことありません。
一生懸命見たのは、あしたのジョーくらいでしょうね。

そんな中、ただひとつ、
何とも言えない気分になった出演作があります。
’96のTCC新人賞を受けているCMです。
それに父親がいい味だして出ているんです。
僕はまだ、シロウトに毛の生えたような時代だったので、
TCCなんて夢のまた夢だったのですが、
けっこうざわついた気持ちになったもんです。
自分が載るべき本に、父が先に出てしまったんだと。

いま見たらどんな気持ちになるんだろう。
今度、年鑑を引っぱり出して確かめてみようかなぁ。

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