リレーコラムについて

広告に、願いを。

小池光洋

 中国の反日デモ報道を、やるせない気持ちで見ています。中国の反日感情はリアルな日本の行動に対して、というより特定の歴史観に基ずく(ある種バーチャルな)教育によって培われた、と聞きます。またインターネットによって増幅された、ということも報道されていました。
 日本のインターネットの掲示板を見ていても思うのですが、バーチャルな環境の中で生まれた憎しみなどのネガティブな感情は、どんどん性質が悪くなる傾向にあるような気がします。身体性を失った憎悪はリアルな痛みを持たないだけに安易に暴走する、というようなことを養老孟司さんも「バカの壁」の中に書いていました。
 曰く「戦争というものは、自分は一切、相手が死ぬのを見ないで殺すことができる方向で「進化」している。(中略)ナイフで殺し合いをしている間は、まさに抑止力が直接、働いていた。目の前にいる敵を刺せば、その感触は手に伝わり、血しぶきが己にかかり、敵は目の前で倒れていく。異常者でもなければ、それに快感を感じることはない。だからこそ、武器はできるだけ身体から離していきたい。その欲望を実現していき、結果として、武器による被害の規模は大きくなっていくばかり」と。
 仮想自然としての農業、仮想生態系としての養殖の例を代表として、文明とは本質的にバーチャルなものだと思います。だからといって、このことを文明の逃れられぬ病として放置しておくわけにはいかない、と強く思います。ひとりの広告制作者として、広告クリエイティブの技術で何かできるはずだ、と強く願います。重い話になってしまいましたが、大切がことだと信じています。続きを、明日も書きたいと思います。

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