リレーコラムについて

タクシー×リレーコラム

山阪佳彦

ある日タクシーに乗ると、足元に入れ歯が落ちていました。
運転手さんにその事実を告げると、
「誰のだろ?さっきの人かなあ。」って苦笑い。
さすがに素手では拾えないので、そのままにしておきましたが。。。。。
(地下鉄やタクシーの珍しい忘れ物特集に、遺骨と並んでよく登場する“入れ歯”は本当だったんですね。)

ある日タクシーに乗ると、座席にコンビニの袋がありました。
中はあたたかいお弁当とお茶、それにデザートのヨーグルトも。
運転手さんにそのことを教えてあげると、
「さっきのOLさんかなあ。お客さん持って帰る?」と苦笑い。
さすがに食べ物は怖いので、敬遠しましたが。。。。。
(忘れたOLさんは、また夜食を買いにコンビニ行ったのでしょうか。)

ある日タクシーに乗ると、フィリピンで恵まれない子供達を
育てているという運転手さんがいました。
はじめてフィリピンを訪れた際に、路上でナイフで刺されたそうなのですが、
その刺した犯人の少年の境遇を哀れに思い、彼を引き取って育てているそうです。
今ではそんな青少年が20人ぐらいに増え、彼らのために一軒家を借りているとのこと。
一年のうち半分をフィリピンで過ごしているそうです。
「たいへんですね。なかなかマネできることじゃないですね。」
そう言いながらも正直驚いたのですが、
「そうでもないよ。すべてなりゆき。お客さん一度、遊びに来ない?」と苦笑い。
さすがに行けるはずもないけど、
「機会があれば、ぜひ!」と愛想笑いをしてタクシーを降りました。
(世の中にはエライ人がいるものですが、
タクシーの収入だけでそんなことが本当にできるのでしょうか。)

ある日タクシーに乗ると、
将来は映画を撮るのが夢だという運転手さんがいました。
今も現役で殺陣の仕事をされている役者さんで、
映画(時代劇)の脚本を書きためているのだそうです。
タクシーで事業資金を稼いでいる最中らしく、
まもなくタクシーの運転手を辞めて、会社をつくるとのこと。
バイクのシートカバーの特許を取得済みで、
それを製品化して売る予定だとおっしゃっていました。
従来の防雨カバーでは風を受けやすいため、
バイクが転倒することが多かったようですが、
特許品はそのあたりを改善するためメッシュにしたようです。
「いいアイデアですね。売れるといいですね。映画のためにも。」
まあ、当たり障りのない感想を伝えると、
「ネーミングは“汚しません隊オカッパー”って
言うんですよ。ネーミングも私が考えたんですよ。」と苦笑い。
さすがに大ヒットまちがいなし!とも言えず、
「売れるように広告をつくりましょうよ。私、広告つくる仕事をしているんですよ」
と言いながら、名刺も渡さずタクシーを降りました。
(それにしても“汚しません隊オカッパー”には驚きました。
当初はウェブで販売する予定だそうです。
とても気になるので時々ネットで検索をしているのですが、
5月16日現在、未だヒットしてません。
でも、夢を追う人の話は何だかいいものですね。)

つづく

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