こんなコピーライター、ちょっといない。 その4
都築徹
ダルエスサラームから、
壊れそうな木造の貨物船で、ザンジバル島に渡った。
甲板にロープでくくりつけられた自転車にも、容赦なく波がかかる。
桟橋で、船乗りたちが荷物を持ちたがった。
見返りが欲しいらしい。
日本から持ってきた100円ライターと、
ナイロビで買ったチューブ入りの酒を渡すと、
こんなもの、という顔をして肩を落としている。
マサイの戦士は、ライターを手にすると、
巨大な炎を出して大喜びしていたのに。
いま思うと偏見や差別だったのだが、
そのときは、船乗りの態度に腹が立った。
島の暮らしは静かだった。
ザンジバル。ビリー・ジョエルの歌のタイトル。
日本からやってきた、からゆきさんが住んでいた路地。
アラブの匂いがする白っぽい建物。
空き地で、子どもたちが、手作りのボールでサッカーをしていた。
久しぶりに、自転車で出かけてみる。
さびれた海岸に、奴隷をつないだ小屋が残っていた。
海に突き出した廃墟に屋根はなく、
わずかに残った壁越しに、青いインド洋が見えた。
白い床に、錆びた鉄のリングが、ひとつ。
出航を待つ奴隷たちが過ごした部屋の中を、
甲羅に大きな穴の開いたゾウガメが一匹、ゆっくりと歩いていた。
彼は、奴隷やからゆきさんを、見たのだろうか。
外へ出ると、のどが渇いていた。
木陰で、島の男が、手際よくココナツの実を割っている。
中から白いイカのようなものをつまみ出し、
果汁が溢れそうな実といっしょに、わたしに差し出してきた。
アサンテサーナ(ありがとう)。
それ以外の言葉は、通じなかった。
街に戻って、食事をしようと路地をさまよう。
店は開いているのだが、どこも売ってくれないのだ。
宿の亭主が教えてくれた。
「ラマダンだ」
断食月の一ヶ月、イスラム教徒は日中に飲食を一切しない。
だから異教徒にも、コーラ1本売るはずはないのだと。
世界一美しい島の思い出は、「空腹」になった。
マラリアなのに、断食の憂き目。
こんなコピーライター、ちょっといない。
わたしがコピーライターズクラブ名古屋の運営委員長を引き継いで、
会員が大幅に減りました…。
現在、約50人。年会費1万円で、入会金なし。
ということは、クラブの予算は、1万円×約50人=約50万円。
わかりやすい。
あとは、広告賞の応募費用だけが頼り。
みなさん、次回はぜひ挑戦してください。
一等賞になると、来年の募集告知のコピーを書くことができます。
<お詫び>
明日から夏休みなので、今日中にもう1本、コラム書きます。
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