リレーコラムについて

金言

鎮目彰夫

鎮目彰夫です。こんにちは。
いま、電通の中部支社におります。
尾崎くんから、このコラムをうけとったものの
さぼったまま週末になり。
とりあえず、何か書き始めることにします。
さて、

世の中に 金と女が仇なり どうか仇に廻りあいたい
ってね。そのお金の話。

4年前にこの名古屋に赴任してくるまで、ずっと東京にいた。
四谷生まれの四谷育ち。
親父も爺いも東京育ち。ついでにカミさんも築地の育ち。
なんの疑いもなく、近所の学校に行って、近所の大学を出て、近所の会社に入って
近所の娘と所帯をもって、の人生だった。
そんな僕にとって、お金というものは、ちょっと厄介なものであったと思う。

貧乏人ほど金を払いたがる。それが我が故郷の人びとの抜きがたい習性であって
ガキの頃から金の稼ぎ方より払い方が気にかかる。
とくに心附、チップですね、その遣り方が気にかかる。
ひどく恰好がよいのだが、また、ひどく難しそうである。

親父やお袋ではまだまだであって、じいさんばあさんとなると、どうにも恰好がいい。
小学生の頃からずっと気にかかってはいたのだが
さすがに、そんなガキがというくらいの分別はあったから
そうそう秘訣を聞くという訳にもいかない。
で、高校生になった頃、我慢もこの辺がいいかげんかと思って
ばあさんに教えを乞うたのである。

金額なんぞ、どうだっていいのさ。とにかく、
と、ばあさんは言う。
「ひとをタダで使っちゃあいけない」

自分のために何かをしてくれた人間には
よしんばそれが彼(彼女)の職業であるにせよ
何かしてやりたいじゃないか。「金なんざ、方便さ」ということらしい。
そういえば、ばあさんにお使いにやらされると、そのたんびアメ玉とかを貰っていたっけ。
少なくとも、こりゃあ札びらを切るのとは違うな、要は気合いってことか。

でもねアキ坊、とおっかぶせるように、ばあさんが言った。
「金を払やあいいってもんじゃない」

突然、わかったのである。
これはもう心附だけの話じゃないな、お金ってものの話なんだな。

以来、お金についての僕の考えはこのふたつだけである。
なるほど大人ってな恰好がいいもんだ、とそのとき思った大人になって
コピーライターという仕事をするようになって、それからずっと、それだけでやっている。
しかし、お金を払うぶんには、まあいいんだけれど
もらう側にまわると、あれれ、となる時が多いんですね。これが。

ま、あっちがガキなんだか、こっちがガキなんだか。
どうですか?コピーライターの皆さん。

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