リレーコラムについて

一人前の称号

荻野綾

自分は一人前か、そうじゃないか。

それは年齢やキャリアで
まわりが判断するもの、
という考え方もありますが。
自分の中で、自分を認めてやろう!と
思ったときって、どんなときですか。

自分も一人前になったなぁと、
しみじみ感じた夜がある。
入社2年目くらいの、23か4の頃だ。
徹夜明け。せまい玄関で靴を脱ぎ、
疲れたカラダをベットに放り投げたとき。
女ひとりのその部屋に、
どこからともなくオトコの匂いが漂った。
何コレ、何なの、
いったいどこから、こんな匂いが。
これって、もももももしかして。
そうだ、紛れもない。
子どもの頃よく姉とふざけて嗅いでいた、
父の足のニオイ?じゃないか。

ヤバい。ヤバすぎる。
いくらなんでも。
こいつはちょっと、マズイんじゃないか。
こんなニオイが、自分の足からやってくるとは。
年頃の娘(当時)としては致命的!ではないか。
などと焦りつつ、驚きつつ、
戸惑いつつも、うれしくて。
ひとり笑っている自分がいた。

毎日雑事をこなすだけに必死で、
仕事上の成長なんて、何も実感できない時代に
「これでお前も立派な社会人だ!」って
言われたような気がしたから。

そう、あれはオッサン特有のモノではない。
黙々と働く大人だけに与えられる「一人前!」の称号。
いとおしいじゃないか。こうばしいじゃないか。
やっぱり、がんばってるじゃないか、アタシ。

自分なりの一生懸命を、無性にほめてあげたいと思う、
そういえばそんな夜があった。
(ま、できればもっと美しい話でほめてあげたかった、ですけど)

新しい環境に行くと、いろいろと思い出します。
昔のこと。前だけを見て、ひたすら走っていた頃のこと。
道はまっすぐだけじゃないから、
突っ走るだけでは前に進まないこともある。
そんなことがわかる年齢にはなったけど。
まだガムシャラを、突破口にしても許される?
いま、試される立場の自分を、
そんなふうに奮い立たせたりもしています。

あ、
誤解のないように付け足しておきますが、
別にニオイフェチではありません。念のため。
もちろんいまは、足元からアタマまで、
フローラルの香りに包まれています。

NO
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