ボツコピーライターのプロジェクトX vol.2
その人の名は、ナタリー(仮名)。
とあるスポーツ用品メーカーの仕事を共にした、
アカントエグゼクティブ。
頭脳明晰、猪突猛進、そして巨乳。
男は、あるプロジェクトで彼女とともにTVCMを提案していた。
ナタリーの口癖は、「COOL!」これは最高のほめ言葉なのだが、
それがたまたま、男の企画(マイケルジョーダンがジョーダンを言う<仮>)に対して
発せられた瞬間から、ドラマティックな日々ははじまった。
「コノCOOLナ企画カナラズ実現サセマショウ!」
彼女におだてられ、自信満々で臨んだプレゼンはしかし、
「面白いんだけどねぇ」というクライアントの婉曲的な否定形で、あえなくボツ。
会社に戻り、当然のように、急ぎ代案を考えていると、
「何シテイル?」と聞くナタリー。
「オルタナティブを考えなくちゃ」と男。
「オルタナティブ?ハァ?」とナタリー。
「ユー、アノコンセプトニ自信ナイ?」
「もちろんあるよ」
「COOL!ジャ、明日マタイクヨ!」
と、また「COOL!」の一言でまったく同じ企画をプレゼンしにいく。
結果は、「なんでまた同じ企画を持ってきたの?」
とお怒り気味のお言葉をクライアントからいただき、再度ボツ。
あらためて、代案を考えようとしている男に、
再びナタリーはやってくる。
「アノネ、最高ノモノハ、ヒトツシカナイヨ。ソウ思ウカ?」
「うん」
「COOL!ジャ、明日マタイクヨ!」
「仏の顔も三度まで」と、「三度目の正直」が戦って、
意外にも「正直」が勝った。
「そこまでいうなら・・・」と担当者のオッケーをいただくと、
死にかけの企画はとうとう、
クライアントのトップに「COOL!」といわせた。
「COOL!」を連発するナタリーは、
日本でのミッションを終えた達成感とともに、
その後まもなく北欧の支社に転勤していった。
ハッピーエンド。で終わりたいところだが、
撮影直前、タレンサイドからの突然の契約解消
という事故で、残念ながら企画は実現しなかった。
男は、あの絵コンテをいまでも大切に保管している。
ナタリーが目の前に現れたら、いつでも再プレできるように。
ボツに未来はないかもしれない。
だけど、永遠に実現を夢見る「COOL!」なボツが、
コピーライターにはあってもいいと、男は思った。
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