いと、をかし - 覚えているよ -
をかし ●普通の状態と異なるものに対して強くひかれるさま。せつないこと。
ふだんはずぼらな私でも、年末になるとさすがに大掃除をしなくては、という気になる。うちのバルコニーにはアロエやその他もろもろが植わった白いプランターが並んでいる。その横に植物を枯らしてしまった使用済み植木鉢を、いくつか放置していた。
先週のある晴れた朝、植木鉢の中の土を空いたプランターに移動し、お役御免になった器をゴミ袋に入れる作業をしていた。最後のひとつの鉢で、私の手はとまった。うわお。緑の芽が6つほど、土から出てきているではないか。丸くけずった鉛筆の先1センチ、そんな可憐な芽たち。
「あれ、これ何だったっけ」
一つの芽の横を軽く掘ってみる。球根・・・ああ、昨年のクリスマス、拙宅でパーティーを行ったときにゲストの一人がお土産にくださったチューリップだ。フューシャ・ピンクで、すっと背の伸びたチューリップ。なんでクリスマスなのにチューリップ?ふつうポインセチアとか、定番ならバラでしょう。他のゲストをすりぬけ、カンパリのカクテルを手渡しながら、私は彼に聞いてみた。
「去年、岡村さんはこどもの時にいつもチューリップの絵を描いていた。って言ってたでしょう。だから、それがいいかなと思って」
あ〜〜、そんな話ししたっけ。したかも。3歳で幼稚園に入園した私は(その当時は3年保育ってのがあったのです)お絵かきの時間となると、いつもいつも、テーマが違っていても—-豆まきとか運動会のときも—-チューリップの絵と風車をひたすら書いていた変な女のこだったらしい。
「雅子ちゃんは、オランダで生まれたのですか」
いぶかしがる先生にうちの親は「いや、国産です」という間抜けな答えをしたかどうかは定かではないが、とにかくアタシはチューリップだったのよ!という話をお酒の席か何かのついでに彼にした、んだろう。たぶん。
私自身話をしたことをすっかり忘れていたのだが、このちっぽけでへんちくりんな話を覚えていてもらえた、という事実はちょっぴりうれしかった。
そして今年芽が出てきたことをきっかけに、私は1年間忘れていた(ごめんなさい!)“チューリップの彼”のことを思い出している。
ちなみにけさバルコニーに出たら、ブリティッシュグリーンのツノは、2センチほどにつんつん伸びていました。クリスマスには間に合わないかもしれないけれど、新年にはまばゆいピンク色の衣装をまとい、凛と咲いてくれるんだろうな。
毎年ある時期になると思い出す。みなさんにはそんな人がいますか。
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一週間岡村雅子の戯言におつきあいいただきありがとうございました。金曜に行ったV6のコンサートは、よかった。その余波でこの原稿は遅れてしまったけど、彼らの真摯でcoolでFankyなステージを見るたびに私もがんばらなくちゃ、と思うことでありました。
さて次に登場するのは、会社の先輩、山本高史さんです。
今年のACC CMフェスティバルの際、審査員紹介の時に着ていらっしゃった、不思議なタキシードがひときわお似合いでした。GUCCI だそうです。やっぱり。
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