東北の旅
去年の9月と12月に、盛岡に行ってきた。
青森・岩手・秋田の三県が共同で
観光キャンペーンをやることになり、
そのキャッチフレーズとシンボルマークを公募するので、
その審査員をやれ、ということで出かけたのだった。
各界のお歴々に加えて、
広告界の知将、大島征夫さんもいっしょであった。
で、そのときのキャッチフレーズ応募作全7950点のなかで、
もっとも私の心に残ったのは、
「ないものがある。あるものがない。」
というものであった。
まさにそうだ、と思った。
これが魅力なんだ、と思った。
「あるものがない。」というひとことが、ダシのように効いている。
そうなんだよなあ、すごく行きたくなるなあ、
と事前審査の東京のデスクで思ったのだった。
しかし、審査会場では
ほかの審査員の方々の同意を得るには至らなかった。
地元の人には「あるものがない。」というのがひっかかる、
ということであった。
それもわかるなあ、東京から見ているっていうのは、
一方通行なんだな、と納得した。
12月の審査は金曜日だったので、
その週末、東北のローカル線の旅をした。
じつは私は「鉄ちゃん」なのだ。
学生時代にかなりハマッたことがあり、仕事をはじめてからは
このウィルスにうなされることもなくなっていたのだが、
数年前にまたちょっと発病した。
時折、ローカルのJRや私鉄に出かけるようになった。
で、東北を旅するのは25年ぶりのことなのであった。
興味ない人にはなんのこっちゃという感じだろうが、
路線を記すと、花輪線、奥羽本線、陸羽東線、左沢線を巡った。
気分は宮脇俊三、である。
盛岡から奥羽山脈を越えると、雪、雪、雪の世界であった。
各駅停車のディーゼルカーに乗っているのは、
たいがい高校生かお年寄り。
あとはバリバリの現役鉄ちゃんがちらほら。
ただひたすら乗って、雪景色を眺めているだけなんだけど、
これがいい。
すっかり忘れていた時間を見つけた感じであった。
それは、やっぱり
「ないものがある。あるものがない。」
という世界だった。
ぜひ北東北を旅してみてください。
大島さんがやってらっしゃるJR東日本のキャンペーンも
すごく素敵ですが、
車窓から肉眼で眺める景色もすごくいいですよ。