佐藤先生の話。
中学受験で、滑り止めの学校以外全部落ちたぼくは、
当時住んでいた広尾から千葉の本八幡という駅まで通っていた。
もう、2時間近くかかっていたと思う。本八幡駅から徒歩30分だったんだから。
もういっそのこと公立の方が良かったんじゃないかと今は思うけど、あの時は、お袋の面子的に私立にいかせないといけなかったんだと思う。落ちたことに対する償いは、もう出来たかなと思うけど。
英語の佐藤先生はいつも木の棒を持っていて、生徒がテストで間違えたりすると、
机に手をつかせてケツを出させて、その棒でぶっていた。
台詞を伴っていたと思うけど忘れた。
「いくぞ!!」とか、そんなんだったと思うけど。
縁なしメガネの奥で、不敵な恐ろしい笑みを浮かべていたのだけは覚えている。
ある日の授業で、ぼくは佐藤先生の質問に答えられなかった。
というか、確か、発音を間違えたかだったかと思う。
その直後、先生が発する言葉が、大きく僕の人生を狂わせた。
「だから、お前は、小糞(こぐそ)なんだよっ!」
残りの授業時間で響いたコグソコールは、10年経った今でも耳に残っている。
その日から、ぼくは人間ではなく「糞」となり、
強力な言葉の力のお陰で、中学校生活を棒にふった。
佐藤先生は、英語じゃなくて、ネーミングの先生だったのかもしれない。
(あの時はカラスとかゴキブリのように恨んでたけど、今はそう思えるんだから、
時の流れってすごいなって思う。)
そんな話。
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