わかりにくい例え
先日、とある打合せで、こんな話をした。
「出演者のリアクションなんだけど、『博士の異常な愛情』のラストでピーター・セラーズが激しく動きまくって、大真面目なシーンなのに後ろの役者が思わずプッと吹き出しちゃうじゃない。ああいう感じにしたいよね。」
スタッフ一同「わかんないんですけどー!」と言って笑う。この瞬間が、好きだ。
まあ、困ったクリエイティブ・ディレクターだと思う。スタッフがイメージを共有し、一つの方向に向かって突き進むよう導くのがクリエイティブ・ディレクターの役目だとすると、自分はまったく逆の行動をとっている。その瞬間ウケたいという、実に身勝手な欲望を満たしたいがために。大体、そもそも “例え話”というものは本来、わかりにくい事をわかりやすく説明するために存在するのに、それを敢えて矛盾させて、一体何がしたいというのだ!? 以上、すべて自分へのツッコミな訳ですけど。
さて、そんな悪戯心が時折通用しないと、さびしいというか、結構しまらない気持ちになる。
数年前、CF編集室にて。監督やプロデューサーとの議論中、こう発言した。
「このタイトルスーパーなんですけど、ジョン・カーペンターの『ゴースト・ハンターズ』で“嵐の三人組”が出てくるじゃないですか。あの稲妻に混じって漢字が出てくるあの感じ、どうですかね?」
すると、監督とプロデューサーが口を揃えて、
「いいですねー!」と賛同した。
「えっ? 知ってるんですか?」
話ふっといてこの一言もどうかと思うが、二人が二人ともDVDを購入するくらい好きだったようだ。数分後には編集のエディターさんまで、
「僕も買いました。」
と呟いていた。その場にいたスタッフの、5人中4人が『ゴースト・ハンターズ』のDVDを持っていたのである。あり得ない…。
またつい数ヶ月前、某車会社の企画打合せで、タレント候補を探していた。二人の営業と一人のコピーライターを相手に、またしても周りを凍りつかせようと、突拍子もない発言。
「周杰倫(ジェイ・チョウ)なんか、どうかな?」
中国のアーティストでカリスマ的存在。日本では映画『頭文字D』に主演しているので、知ってる人は知ってるかもしれない。しかし、その打合せの場にいた三人すべてが、
「周杰倫、いいかもー!!!」と。
知ってんのー??? 唖然とする自分を置き去りに「周杰倫、出しましょうよ!!!」「周杰倫、絶対イイ!!!」と盛り上がっている。
「でも誰も知らないと思うよ〜」と話を潰したのは、結局自分だった。あり得ない…。
まあ、自分という人間は、相当ひねくれた性格なのだろう。会社における自分の立ち位置も、いうなれば『甲賀忍法帖』における“如月左衛門”のような感じかもしれませんね。
わかる人、手上げて!
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三日間に渡って、実にしようもない事を書きました。読んでくださった方にはここで丁重にお詫び申し上げます。来週のコラム担当は、昨年度ロッテ・マリーンズ優勝の陰の立役者、groundの渡辺潤平氏にお願いします。乞うご期待!!
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