リレーコラムについて

千葉ロッテマリーンズ

渡辺潤平

去年一年間、千葉ロッテマリーンズの仕事を担当しました。
出身が船橋市なので、ロッテが川崎から千葉に移転した10年前から
ファンになり、たびたびマリンスタジアムへ通っては、
めった打ちに遭うピッチャーを肴にビールを飲むのがささやかな楽しみでした。

ロッテは弱い弱いチームです。
勝てない。だけどなぜか憎めない、不思議な魅力のあるチームでした。
それが、2年前ぐらいから様子がおかしくなりました。
強いんです。
筋金入りの負けグセが簡単に治るはずもなく、肝心なところで
打てなかったり、ミスがあったりで勝ち星は相変わらず伸びませんでしたが、
バレンタイン監督が帰ってきたり、いい若手が出てきたり、
先発ピッチャーがものすごく充実してきたり。
いつの間にか、実力派のチームへと変わりはじめていたんです。

そして2005年。
球界再編問題が巻き起こり、ロッテはほぼ消滅すると言われていました。
どうやらホークスと一緒になる(というか吸収される)らしい、というのが定説でした。
そんなさなか、ロッテ担当の営業から一本の電話があったのです。
「マリーンズの仕事があるんだけどさ、君がロッテファンだって聞いて…」
驚きと嬉しさで、ぶっ飛びそうになりました。
いいコピーを書きたいという気持ちより、撮影で選手に会えるかもしれないという
ヨコシマな気持ちで、その誘いを快諾しました。

開幕の相手は、東北楽天ゴールデンイーグルスでした。
プロ野球再生の担い手として、楽天は異様な注目を集めていました。
千葉県民は、ひねくれた根性がその県民性です。
ちくしょう、楽天め。まだ1勝もしてないのに優勝したかのように目立ちやがって。
プロ野球のニュースがこれだけ世間を騒がせているのに
ロッテのロの字も出てこないこのみじめさを、
ヒジの故障でもう何年もマウンドから遠ざかっていたジョニー黒木の悔しさを、
東京の属国、あるいはピーナッツ畑としてしか見られてこなかった千葉県の屈辱を、
すべて広告にぶつけてやろう!
こうなりゃ直球勝負です。
もはやコピーライターでなく、一人のロッテファン、一人の千葉県民として
ADとクライアントに、言葉を投げまくりました。

結果。
マリーンズは秋まで勝ちつづけました。
去年、強い!と僕が感じた以上に、マリーンズはいいチームに成長していました。
優勝の瞬間、僕は土砂降りのマリンスタジアムにいました。
(博多でのプレーオフ最終戦を、千葉に残ったファンは球場で観戦したのです)
雨と涙とビールで、もうぐちょぐちょでした。
あの日のことは、たぶん一生忘れません。
そして僕は、TCC新人賞までいただくことができました。

不思議なぐらいすべてがうまく行った一年でした。
今年の広告は、残念ながら担当できませんでした。
そしてチームもWBCの余波を思いっきり喰らい、
定位置とも呼べるBクラスへと逆戻りしてしまいました。

あんなに夢中になれた仕事には、そうそう巡り合えないかもしれません。
だけど、またそんな仕事に出会えた時、
もっともっといいコピーが書ける人間になっていたいなぁと、
照れ臭いながらも半ば真剣に思いながら、今日も原稿用紙に向かっています。

一週間ありがとうございました。
一日サボってしまいました。ごめんなさい。

次のバッターは、僕の師匠。博報堂の呉功再さんです。

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