ひろかすです。

上田です。
いまのは名字で、下の名前は浩和です。
ルビをふるなら「ひろかず」です。

1986年にドラゴンクエストがはじめのブームを迎えたとき、
ぼくは小学生でした。
最初のドラクエは、主人公に名前をつける際、
濁音を含めてひらがな4文字と制限がありました。
そのためぼくの場合は、
「ひろかず」とはいかず、
「ひろかす」でした。
勇者ひろかすは、いつもどこか弱そうでした。

あれから20年を経て思うのは、
あのとき「す」に付くはずだった濁音は、
どこに消えたのかということです。
気になったぼくは、
地元の熊本日日新聞社に電話して、
その頃の記事を全部洗ってもらいましたが、
「街に濁点の落し物」といったような記事は見つかりませんでした。
ごく小さなものですから、たとえ落ちていたとしても、
誰も気が付かないのでしょう。

それでも諦めきれないぼくは、
小学生の頃によく着ていたポパイのスタジアムジャンパーのポケットのなかに
濁点が紛れ込んではいないかと母親に電話してみました。
ところが、ぼくの子供服は全部、
ボランティア団体に寄付したあとでした。

手掛かりを失ったぼくはしょんぼりです。
でも、遠いアフリカあたりの
ポパイのスタジアムジャンパー少年が、
ポケットのなかに見つけた濁音で遊んでいたとしたら、
それは素敵なことだと思うのです。

ブーンと飛んできた「ハチ」を「バチ」にして、
太鼓を叩いて踊ってたりして。
トラに追いかけられている途中で、
「トラ」を「銅鑼」に変身させて、
ジャーンと鳴らして助かったりして。
(ライオンを変身させられないのが、濁点の弱いところ)
古い濁点ですから、それほどの効果は期待できないし、
そもそもアフリカだからスタジアムジャンパーは必要ないのかもしれませんね。

20年も昔の濁点のことですから、その消息を追うのは難しいです。