リレーコラムについて

僕は、どう書いていたか?

濱田篤

僕は会社務めの経験があまりないので、他の人がどんなふうにしてコピーを書いているのかよく知らない。
コピーはどんなふうにして書いてるの?と聞かれることがあるが、僕のほうが教えてもらいたい。コピーライターによっていろいろなパターンがあると思うが、僕の場合、オリエンを受けてから締切まで余裕があるときは、意識的に放っておく。もちろん頭の中では考えてつづけているが、紙には書かない。一度書くと、じぶんの書いたコピーに引っ張られる。どうしてもそのコピーのまわりをぐるぐると回ってしまうからだ。だから意識的に放っておく。犬の散歩をしたり、泳いだり、(あるいは一番苦手な)事務的な日常的な用事をしてわざと忘れるようにする。

僕は請求金額を交渉するのが苦手だ。やらないですむならできるだけやりたくない。でもそういうわけにもいかないので、仕方なくやる。そして後悔する(金額を一ケタ以上少なくまちがえて呆れられたこともある)。そんなことをしてコピーを書くこととは直接関係ないことをやって過ごす。そして、コトバがぽこぽこと発酵してくるのを時間が許す限り待つというのが、いつものパターンになっている。いつも完全発酵しているとは限らないけどね。

僕の前にコラムを書いていた廣澤さんは、僕とはまったくちがって、舌を巻くほどクレバーでコンセプチュアルで視野の広いコピーライターだ。はたで見ていると、僕がコピーライターをやっていられるのは何かの間違いのような気になってくる。
でも廣澤さんやタナカノリユキさんといっしょの仕事はとても面白い(最近のNIKEや佐川急便のCMがそうだ)。だからそういうときは企画の方に僕はまわる(でも24時過ぎからの企画会議はやっぱりツライ)。
それに僕の企画を面白がってくれたのは廣澤さんがはじめてだったのだ。それまではどこへもっていっても、ふ〜ん、そんなのいらない、ってかんじだった(だからこれからコピーを書く人も見せる人を選ぶように)。

僕は文章を書くのがどちらかといえば好きではなく、絵を描いている方が気楽である。もともとコピーはコミュニケーションのひとつの手段ぐらいに考えていた。考えてみると、企画の仕事もコピーを書くことも僕の中ではあまり差がない。
あえていえば企画の仕事をさせてもらい、コトバの伝達のスピードがグラフィックの場合とどんなふうにちがうかを(頭ではわかっていたけれど)実際に経験できたような気がする。

という具合に、コピーに集中しすぎないようにしてコピーを書くというのが僕のスタイルになっているかもしれない。そこのところ(次に登場してくれる)千葉さんはどうですか?僕はこの人と会うとなぜか優しい気持ちになれる。女性ならイチコロなんじゃないか。でもそうでもないらしい。世の中はフクザツだ。
千葉さん、最近会っていませんよね。久しぶりに飲みにいきませんか?もちろん千葉さんのコラムが終わってからね。

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