リレーのリレー<第1区>
タカハシマコト
原田さんからバトンを受け継ぎました博報堂の高橋真です。
年次ひとつ上の原田先輩には、
入社以来、年子の弟のようにかわいがっていただいてます。
おとなになると友達ってなかなかつくりにくいものですから、
20代でできた仲間はほんとうに貴重です。
日夜、コピーを書いては見せあいっこした原田さんとは、
すこし席が離れてしまいました(といっても同じフロアだけど)が、
今の席も愉快な仲間たちに恵まれています。
いつもおもろい話を聞かせてくれるのですが、
これをひとりじめしてるのはもったいない。
というわけで、考えました。今週は、リレーコラム内リレーコラム。
5日で5人。1週間で1月ぶんのバラエティをお届けします。
第1区を走るのは、
隣の隣に座ってる「いじられ名人」田中幹(タナカモト)くん。
飲み会には欠かせない、塩崎チームのトリックスターです。
それでは始めます。リレーのリレー、用意どん!
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【恐怖について】
いじられやすい体質のせいで俺は、生来、恐怖に敏感だった。『あなたの知らない世界』は、ほとんど欠かさず見ていた。新倉イワオ(霊研究家)は俺のポップイコンだった。俺がウォーホールだったら新倉イワオのシルクスクリーンを作っていたはずだ。細川たかしがゲストで来たとき、再現VTRがなぜか紙芝居だったことをいまだに覚えている。スペシャルでは、慈雲法師(「じうんほっし」とよむ)が尼を数人(お気に入りの尼だろう)引き連れてニューヨークの霊能力者に会いに行っていた。慈雲法師を先頭にニューヨークの舗道を渡る尼たち、そのときのカメラの構図がなぜかビートルズの『アビイ・ロード』のジャケットの構図を意識していた、そんなおぼろげな記憶が、あの頃なくしたフランス人形のように心の奥の引き出しの隅っこに転がっている。あれからどれくらいたつのだろう。ベルリンの壁は崩壊し、J-Walkのボーカルの人もめっきり老け込んだ。それは昔からか。変わっていないのは「はぎや整形」のCMくらいだ。
しかし今でも、俺は恐いもの好きだ。メールで「き」と打つと「狐」が一番上に来る。会社で仲間と話しているときも、話がいつのまにか譚(はなし)になっていることが多い。いい古老がいないか、常にアンテナを張っている。俺にとってCMの現場は怪談収集の現場でもある。これは最近聞いた話のひとつだ。ある女性のマッカーさんが子供の頃に夜中目が覚めると、居間で全然知らない家族がテレビを見ていたという。声を上げそうになったところ、家族の中のおじいさんが気がついて、目で制したというのだ。そんなに恐くないではないか、そう思われるかもしれない。いや、実際この話は恐くないのだ。むしろ温かいホラー、『世にも奇妙な出来事』でいうと三話目の感じなのだ。だから、逆に恐い。単に恐がらせようとせず、考えさせようとしているところが。
こうした恐怖の収集は結局最後には、ひとつの問いにぶつからざるをえない。すなわち、もっとも恐いものは何か。この問いにほとんどの人は「それは人間です」とまるで企業広告のタグラインのような答え方をするだろう。実際、人間ほど恐いものはない。ナパーム弾を作ったのも、映画『桑の葉』シリーズを作ったのも人間なのだ。
しかし、この問いをさらに一歩進めてみよう。ではなぜ人間が恐いのか。
答えは簡単だ。身近にいるからだ。
人は、身近なものをこそ恐れる。昔の怪談に猫とか沼とかが出てきたように、今の怪談にはケータイやらネットが出てくる。どちらも身近だからだ。
それゆえ『魁!男塾』の最終回は、間違いではないのだ。あの最終回で、剣桃太郎が卒業試験として暴力団の事務所に乗り込んだ際に「こいつらプロだ、半端じゃない」といったとき、ほとんどの読者は度肝抜かれたと思う。しかし、一トンの鉄球を頭で受け止めていた塾生たちも身近なものはやはり恐いのだ。
『ドラゴンボール』がハリウッドで実写化されると聞くが、この壮大な物語に、たったひとつだけ正しい終わり方が一つあるのだとすれば、魔人ブーを倒したあと、悟空が暴力団の事務所に行き元気玉で地球のみんなから力をもらいながら「こいつらプロだ、半端じゃねえぞ」でエンドロール、監督:ポール・バーホーベン、悟空:ラルフ・マッチオ、ピッコロ:モーガン・フリーマン・・・
だと思うが、どうか。
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