遠距離のススメ
進研ゼミの「進路特集」のすごかったところは、広告代理店に入りたければ、様々な経験(一見遠回りにも思えるような経験)をした方がよい、と書いてあったこと。
大学を選ぶとき、僕は大学のパンフレットを徹底的に取り寄せた。大学のカラーやキャンパスを知りたいからじゃない。「電通」や「博報堂」に何人くらい入っているかを調べるためだ。パンフレットの後ろには各学部からどんな会社に入社したかが載っていた。僕の大学選びの一番の基準はそれだった。芸大も考えたけど、文学部に美学科というのがあって、実習で映画撮ったりすることができるって書いてあったので、結局この学部を志望することにした。1浪の末になんとか合格。こうして「広告代理店」に一歩近づいた(と思っていた)。小学3年で働く覚悟をした僕は、早く働きたくて仕方がなかった。進研ゼミの本にも書いてあった通り「広告」から距離を置くことにした。バイトにあけくれたのだ。それこそ様々なバイトに。単位はギリギリ、でも給料はモリモリ。あっという間に3年間が過ぎていった。そして、やってきた就職活動。正直焦った。僕の手元に残っていたのは大学生の誰もがあけくれるバイトという武器だけ。うちの大学、学部から「電通」に入っている人がいたとは言え、それは1人とか2人の世界。自分がその選ばれし数人だとは思えなかった。それでも、どうしても代理店に行きたかった僕は「学生広告論文電通賞」というものに出会う。これは電通が学生に対して、あるテーマに沿った論文を募集するもので、これに入賞するとすごく有利になるというものだった(現に去年1位の人は電通に内定していた。しかも同じ関学の人だった)。広告に対する執念が一気に甦ってきた。締切りまで2週間。テーマは「ネットワーク社会における広告の役割」。バイトに明け暮れていた僕に「広告」や「マーケティング」の知識は皆無、「ネットワーク社会」なんてチンプンカンプン。それどころか、そもそも論文なんてものを書いたことがない。正直、文章を書くのも怖い(高校時代「現代国語」の成績が10段階中1だったこともあるくらい苦手)。集中力は半端じゃなかったと思う。そんな僕が1位になったくらいだから。こうして電通の門を叩くことになる。
今思えば、大学の3年間「広告」から離れたことがよかったのかもしれない。それによって生まれたエネルギーが論文に集約されたのだと思う。最短距離を進むより回り道をした方が、脚力がつく。近くにいるより遠く離れた方が、思いの深さに気付く。僕は身をもってそれを体感した。それからだ。意思とは関係のない出来事が起こると、少しワクワクするようになったのは。
ちなみに僕には学生時代3年間付き合った彼女がいた。入社して東京配属となり離れ離れに。4年間、遠距離恋愛をした。彼女は今嫁さんとなって僕の一番近くにいる。
3892 | 2015.06.27 | 初めてのプロモーション |
3891 | 2015.06.26 | 最終日 |
3890 | 2015.06.23 | CD必要論 |
3889 | 2015.06.22 | 送別会 |
1924 | 2007.03.23 | 負け犬魂 |