リレーコラムについて

おっさんのチカラ

田畑尚門

はじめまして。塚越からご指名いただきました電通の田畑尚門と申します。
1960年、京都生まれ。おっさん真っ只中。
ちょっと恥ずかしいですが、何か書かせていただきます。

今から20数年前のことです。まだこの世界に入って間もない僕が
クリエーティブの先輩方と飲みに行ったときの話です。
酒がすすみ、映画の話になりました。
皆さん詳しくて、ヨーロッパの小難しい感じの映画話で盛り上がります。
エーゼンなんちゃらとか聞いたこともない監督の名前が飛び交います。
そうこうするうちに、ある人が僕に聞きました。
「ところで田畑クンの一番好きな映画って何?」
僕は胸を張って答えましたね。
「ロッキーですわ」
なんか可哀想なヤツを見る目で見られましたね。
僕は心の中で叫びました。
(ボケか、お前らは。ロッキー見て、生卵飲んで走ってゲロを吐く。
それが男ちゅうもんやろ。あほんだら!)

皆さん、「ロッキー・ザ・ファイナル」見ましたか。
やっぱりいいね、ロッキーは。僕も嫁はんもボロ泣きしました。
かつての自分とかつてのロッキー、今の自分と今のロッキーを
重ねて泣けるわけですが
この映画は「おっさんのチカラ」というのも教えてくれますね。

ところでどうでしょう、広告業界。なんかこう「若い人、若いチカラ」
に頼りすぎていませんか。もちろん若い人は大切に伸ばさないといけない。
でもね、今のおっさんたちをナメてもらっては困る。
――今のおっさん。その世代的特徴としては
部活の時間にウサギ跳びで鍛えられ、
成長期に光化学スモッグで鍛えられ、
多感な時期に梶原一騎に精神力を鍛えられ、
丸見えのAVではなく平凡パンチなどで想像力を鍛えた、
とかいろいろある。
けれど何より、今のおっさん世代は若い世代より圧倒的に人口が多い。
単純な話、おっさんの消費者の方が若い消費者より圧倒的に人口が多い。
しかも枯れていない人が多いからけっこう金は使う。
日本の人口動向を見るとこの状況はとうぶん続きますな。
つまりおっさんの広告クリエーターがまだまだ頑張る必要がある。
(もちろん、おばはんクリエーターもね)
これから先、50代なんて当たり前。60代、いやいや70代の
コピーライターやプランナー、ADやクリエーティブディレクター
が大活躍する時代が来ます。必ずです。

もし「いやー、オレはもうキツい」と思うおっさんや
「おっさんは、しょせんおっさん。大したことない」と思う若い人は
「ロッキー・ザ・ファイナル」か
「マイケル・モーラーVSジョージ・フォアマン」でも見てください。ぜひ。

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