若いもんのチカラ(2)
田畑尚門
(昨日からの続き)
21年前にコピーライターになったときに
「おっ、コピーライターってボクサーみたいやな」
と、かなり強引なことを考えました。
事実、僕は新人賞をいただいた時のコピー年鑑のあいさつ文で
「ジャッカル丸山みたいなコピーライターになりたい」
などとミステリアスなことを書いています。
※ジャッカル丸山さんは‘80年代に活躍した日本スーパーフライ級チャンピオンです
さてボクサーと広告クリエーターの共通点はなんでしょう。
まずは実力がシンプルに見えやすいことですね。
ボクサーは試合で強いところを見せれば評価される。
クリエーターもいい企画、いいコピーを出せば評価される。
ソーシャルスキルに少し問題があったり、
金髪やパンチパーマ(いねえか)の人でも
本質的な評価は得られるわけです。
そういう職業って他にあまりないでしょう。
もうひとつ。
適切でハードなトレーニングをすることで
着実にチカラがつくところも似ていますね。
さて日頃からボクシング界と広告業界の
若いもんに接している僕から、
広告の方の若いもんへの要望を書きます。
(ボクシング界の若いのは、TCCリレーコラム
読まないでしょうから)
誤解をおそれずに言うと、仕事をするとき
さまざまな“事情”を考えすぎるのはやめましょう。
ハナからワケ知り顔な企画を出すのはやめましょう。
とくに仕事の初期段階は、若いもんはひたすら
おもしろくて強烈な企画やコピーを出すことに全力をあげましょう。
僕は若いころ打ち合わせの場で
先輩たちを驚かせたり笑わせることを目標にしていました。
空振りを厭わず、判定狙いではなくKO狙いのコピー、企画。
そういうふうにクリエーティブのパンチ力を常に鍛えておかないと
「いざ」という仕事が来たときに爆発力が発揮できない。
地味めの仕事が来たときは、そのまま可もなく不可もなくこなすようになり
クライアントの方々からガッカリされることになります。
もちろん僕らがやっているのは仕事であり、業務です。
いくら強力な企画をつくってもその時のプレゼンに
ふさわしくない、という場合も多々ある。
そういう判断は上の人々にまかせ指示をあおげばよい。
もし自分の案がボツになった時でも、上の人から
「すまん。この案はプレゼンには出せないけど、ものすごくおもしろい」
くらい言われるような案を出してほしいものです。
くどいようですが、あなたたち若いもんは若いうちに
プリミティブなクリエーティブ力、足腰を鍛えぬいてください。
そして、まわりの先輩たちをビビらせてやってください。
先輩たちは、そんな若いもんのチカラを楽しみにしています。
※お知らせ(1)
昨日今日とボクシングのことをずいぶん書きました。
もし、若いボクサーたちの戦う姿が見たいなら、
7月12日の18時〜水道橋の後楽園ホールへお越しください。
我がシャイアン山本ジムが主催するプロボクシングの試合があります。
僕がセコンドする選手も数名登場します。
興味のある方は、ぜひ。
※ お知らせ(2)
推薦図書があります。僕の後輩で元プロボクサーの
ノンフィクションライター、林壮一が著した「マイノリティーの拳」(新潮社)。
世界チャンピオンにまでなった“マイノリティー”と呼ばれる人たちの
栄光と挫折。取材対象者たちと友人関係を結びながら取材しまくった
力作です。アメリカ社会の残酷さを浮き彫りにしながらも
けっして暗くはならない。人のエネルギーに満ち満ちた一冊です。
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