リレーコラムについて

スカウトな木曜日

村木智一

昨日、高校野球の話をしましたが
僕は神奈川大会を中心によく観戦に行きます。

その客席には、他の観客席にはあまり存在しない特徴的な客層が存在します。
一人で来ている、中高年のおじさんです。
しかも多くの人がスコアブックを手に、決して簡単ではないスコアを
一球一球熱心につけています。
結構異様な光景です。ものすごい数のスカウトが集結しているような。
そんなおじさんと言葉を交わしてみると、彼らは例外なく
まさに「スカウトの目」で試合を見、スコアをつけています。
注目度が低くドラフト下位でプロ入団、しかし今やトップ選手。
そんな選手名を2、3人あげ、「俺は高校時代からアイツはものになると思ってた」
なんて言いながらスコアブックを見せてくれる。
観戦の楽しみ方のひとつとして、自分独自の目線で金の卵を探しているのです。

「スカウトの目」。
自分が中堅やらベテランやら言われ出してから、仕事で意識する機会が増えました。
弊社の採用面接官をやったり研修の講師をやったりするときは明らかに
「スカウトの目」になります。
企画打ち合わせなんかでも、意識します。
何となく出た一言や落書きのように書かれた絵、
紙の端っこに恥ずかしそうに書かれたコピーなど拾い上げ企画へと広げていく。
これもちょっとした「スカウトの目」だと思います。
でも、これ結構責任重大です。
スカウトによって、全然違ったものになるのですから。
プレイヤーでもありスカウトでもある。
今はそんな時期なのかなあと思っています。

ちなみに高校野球って、季節・大会によりその性質は全く違います。
その違いが面白い。

秋の地方大会は春の甲子園が懸かっていると同時に
各チームのレギュラー争いが熾烈化していておもしろい。
この時期からレギュラーをあきらめている選手などいるわけもなく、
したがってどこかライバルの活躍を喜びきれていない、
チームとして一丸となっていない感じが逆に緊張感を生み出していて、
それが魅力になっていると思います。
控え組の「試合に出たい」「チャンスが欲しい」という思い。
一方レギュラー組の「手放すものか」「ミスしたら座を失う」という危機感。
各チームそれらが混然とし不思議なパワーを生み出しています。

シード校を決める春の大会は、夏と秋のまさに中間。
チーム内競争を感じさせつつ、夏を睨んで高校同士の探り合いや駆け引きもあり、
夏に向けた過程が見てとれます。

夏は、負けたら終わりの集大成。
どのチームもチーム内での役割も決まり、一丸となって闘う。
きっと「すべての高校の目標が甲子園」ではないはず。
「甲子園は無理だろうな」と思っているチームも多いはずです。
ただ、どんな高校も「一日でも長くこのメンバーと野球がしたい」という思いは強い。
それが遠心力となって見ている人々にも届くのです。
だから、負けて号泣している姿が共感を持って受け入れられるのだと思います。
夏は、どんな試合にもドラマを感じる。
そこに、魅せられるのです。

毎年、目が離せないわけだ!

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