神楽坂酔話。
コラム5日間テーマの縛り、安易でありますが
日頃飲み歩いている街を5つ、ということにいたしました。
で、今日はテレビドラマですっかり有名になり、炎上してしまった神楽坂です。
以来、しっとりした街中にカメラ小僧と写生娘と地図老年が繁殖。
そんな中でも我関せずと無駄な取材にも応じず、マイペースを保っていた
神楽坂の象徴のような居酒屋が[伊勢藤]です。
酒は白鷹のみ、酔客お断り、大声・献酒禁止、1グループ4人以内、等々
創業以来のルールを厳守してきた、大人が静かに飲む店。
現当主は3代目ですが、これがまた先代に輪をかけて頑固でして。
時々場違いな客が痛い目にあうのを酒の肴にしているいやみな客が私です。
先代時代分も含めた、典型的なやりとりを列挙してみました。
客「見事な建物ですな。明治ですか?」
主「いえ昭和の創業で、この建物は戦後です」
客「このおいしいお酒は吟醸で?」
主「灘の普通酒で、そこの樽は飾りです」
客「この塩辛はお手製で?」
主「いいえ瓶詰めです」
客「この酒器は時代ものですか?」
主「出ているのは、注文で誂えたものです」
客「今日は30年ぶりでね、先代にはよく叱られたもんだ」
主「今でも相変わらず叱らせていただいてますよ」
客「ビールをいただけますか?」
主「うちは日本酒だけでして、近所によいお店がありますからご案内しましょう、さあさあ」
どうです、萎えるでしょう(笑)
ホイチョイの馬場さんによれば「恐怖を共有でき、男女の仲を親密にするお店」
とのこと。試してみる勇気のある方はどうぞ。
もっとも、客が丁寧すぎてバッタのように恐縮するのも、見ていてつらいですよ。
ここ数年、老舗が次々に店をたたんでしまった神楽坂。
この店を食前酒がわりにし、二軒目以降本格的に飲み食いする所が減ってしまいました。
いまやこの街は私のローテーションの中で、足が遠のきつつあります。
そういえば佐々木宏さん、最近顔出してらっしゃいますか?