31歳のオヤジ観察[第一弾]
こんばんは。
今日は今までの自分の日記で一番反響のあったものをご紹介します。
少し前に書いたものなので鮮度がありませんがご勘弁ください。
このほど私は、
アキラ(父 73歳)の生態を調査すべく
都内某所に潜入。
同じヒト科でありながら、いまだ謎の多いこの生物と今回
24時間近くを共にしたので、その一部始終を報告しようと 思う。
なお、調査は今後も続くが、
アキラは、動物分類学上でも一、二を争う敏感な種であるため
この調査が本人に発覚したと思われる場合は、速やかに終了
する。
・ ・ ・ ・ ・ ・
その日、
僕はアキラを映画に誘っていた。
男二人で映画。
場所が場所ならちょっとヤバい感じだが
これだけ年齢差が離れていれば街ゆく人も「そっち系」の疑惑を
あまり持たないだろう。
家に迎えにいった僕に、
アキラは株価チャートから目をそらさずこう言った。
「おい、3分も遅刻だぞ。映画、はじまっちゃうだろう。」
いわゆる威嚇行動である。
本当は、アキラが自ら時計を進めたのを
忘れているだけなのだが。
それでも小言がこの程度で終わるのは、映画を楽しみにしている証拠。
やはり、息子と行く映画というのは、愛人と行くそれとは
趣きが違うのだろう。
軽い興奮状態にあるようだ。
向かったのは六本木ヒルズ。
滅多に来ないのに、自分の縄張り感たっぷりに歩くのは
己が自然界の頂点に君臨している、という自負からだろうか。
しかし、
特有の「かあああ、ぺっ!」などのマーキング行為が
みられなかったことを考えると、実は緊張していたと思われる。
その後、B級映画好きのアキラは
ジョディ・フォスター主演の『フライトプラン』を選んだ。
98分という上映時間は、
「俺の人生の残り時間は短い」が口グセの彼には
ぴったりだったようだ。機嫌がいい。
映画の内容は上空1万メートルを飛ぶ機中で
ジョディ・フォスター扮する主人公の娘が突如行方不明になる、というもので
上映して間もなく、アキラは反応を見せはじめた。
「おおっ!むむむ!」
はじめは、ジョディ・フォスターへの求愛行動かと思ったが、、、。
いつしか反応は過激になり、あらゆるものがその対象になっていった。
「しかし、なんでこのポップコーン甘いんだ。
お前、俺を糖尿で殺す気か?」
もちろん、このポップコーンはアキラ本人が買っている。
「なんかあのアラブ人があやしいな!アラブ人は
大体あやしい。」
国際問題に発展しそうな偏見。そして、さらに。
「だから、飛行機とか乗っちゃいかんのだ!」
、、、そもそも論、である。
映画の感想を言うたぐいのCMに絶対出演させてはダメ・オブ・ザ・イヤーだ。
とはいえ、ぶつくさ言いながらもさすがB級好きである。
奇跡的に最後まで一度も席を立たなかった。
これが感情の機微なんかを描くミニシアター系の映画だったら、
おそらく彼はとっくに席を立ち、家で株価チェックに入っている。
映画が終わり、家に向かう車中でも
映画への反応は続いていた。
「いやあ、ジョデイは、『(羊たちの)沈黙』が
ピークだったな。」
どこか長島監督的とも思えるこの種の台詞を言うとき、
アキラは、略しているのではなく忘れている。
しかし、ええかっこしいの彼はそれを認めたくないので
つい、通っぽく言うのだ。ジョディ、沈黙などと。
いい加減静かにしなよ、と僕がいいかけたときだった。
アキラは遠くを見ながら、こう続けた。
「、、、、、飛行機の映画見ると
飛行機、乗りたくなるな。
、、、、、 今度、男三人(父、兄、僕)で旅行でもいくか」
僕も兄も実家を離れ、
母が他界したことはやはり寂しいのだろう。
最近は、よくこんなことを言う。
今日もたぶん、どこかのタイミングからずっと言いたかったに
違いない。そう思うとなんだか切ない。
僕は、いつものように決まって
「そうだね。いきたいね。」と応えた。
それが毎年叶っていないことを知っていながら、
僕が賛同するのを聞いて彼は満足そうに
「うむ」とうなずいた。
それから、家に着くまでの間
彼はずっと押し黙っていた。
何を考えていたのかは、なんとなくわかる。
だからこそ、
今年こそは、少し長い休みを取ろうと思う。
温泉地での「アキラの行動」も観察してみたいし。
なーんて。
今、旅もののコピー(特に親と子でいくツアー)が必要な方はぜひ、
goodluck2007200020002000@yahoo.co.jpまで。
(あ、紫の野菜生活が好きな方もぜひ!)
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