働く。 Part?
僕はいま、リクルートの求人広告を作っています。
そもそもリクルートメディアコミュニケーションズ(RMC)という
長ったらしい名前の会社は、リクルートの制作部門を分轄して
設けられた会社です。つまり、リクルートには制作はおらず
すべての制作はRMCに属しています。
このRMCが手掛ける領域は、リクルートと同様
住宅・学校・ブライダルなど多岐に渡っています。
そんなRMCのすべての広告を、「人生広告」と名付けています。
なかなかいい言葉ですよね。
外部から見れば、ニッチ領域に長けているように見える
会社かもしれませんが、RMCは人生のコンタクトポイントを
つなぐ人生広告を作っていると自負しています。
そんなRMCに入社して、分かったこと。
とにかく若いし、上下関係も社歴もいっさい関係ない。
実力主義で、ミッションや査定はものすごく厳しい。
だけど休暇をとらないと怒ってくれるし、勝負時には
黙って見守ってくれる。仕事だって自主提案の嵐だし、
が故に企画書からプレから予算・スケジュールの管理まで
すべてを一任される。つまり、いい会社です。
手前味噌だけれども、若い人にとっては電通や博報堂なんかよりも
活躍できる風土があると思う。だって、現場がいちばん偉いんですから!
こんな環境なので、DirectorあるいはPlannerとしてすべての
クリエイティブを監督させてもらってます。コピーはもちろんデザインや
自分で撮った写真を使うこともあるのです。こんな恐ろしい境遇で
原稿を制作していると、あっという間に何十本もの原稿が、自分の
手元に残っていきます。
さらには、RMCが手掛ける広告には、必ず効果がついてきます。
目に見えないブランド云々ということは、滅多にありません。
ひとつの広告で、どれだけの人数を動かしたのか。
この痺れる瞬間が、常に付きまとっています。
なので出入り禁止になることもあれば、指名につながり
すべて丸任せになることもあります。
その成功のためには、かなり細かくターゲット設定をやっていきます。
商品広告であれば、20代女性をターゲットにしていても
50代男性が買ってくれても構わないでしょう。でも求人は違います。
20代の若手を望んでいる会社に、50代の人が応募されては困りますし
その逆も然りなのです。つまり広告を見る人を絞り、その心境に迫り、
その行動につなぐための表現が必要です。でも、これって広告の
基本みたいな形なので、すごく役に立つ。しかも打席が多い。
嘘偽りなく、いいことづくめなんですよ。こうして僕の制作欲は
どんどん上昇し、連日連夜、よい原稿を作り出すことだけに
注力してきました。
こうして念願だったTCC新人賞を手にし、いま僕が思っていることは
一行の「重みと軽さ」にあります。一行の重みという言葉を、よく耳に
するのですが、新聞記者出身としては、コピーに重みはないと思っている。
コピーで勇気を与えることはあるけれども、コピーで人を殺せますか?
どんなことがあっても、コピーライターは人を殺さない。だけど新聞は
死に追い込んでしまうこともある。たった一行を読んで、自殺された方が
どれほどいたでしょうか?
その苦悩を味わいそうになった身からすると、コピーの良さって
生活者から見た「一行の軽さ」にあると思う。微笑んでくれたり、勇気を
もらったり、かるく背中を押してくれたり。商業におけるアクションの後押し、
あるいは社会に対しての問題提起。
どんな形であっても、コピーは前向きです。
切ない気持ちや時代の暗闇を表現する際にも、決してネガティブだけで
広告は成り立たないと思う。だとすれば、コピーライターの仕事って、
言葉を通して世の中に光明を射す行為じゃないでしょうか。その共感と
発見が、いまの時代の空気とつながり、「広告は文化」と言われる所以だと
僕は思っています。
だから、いまだからこそ、僕はコピーライターの時代だと思う。
年鑑の講評で繰り返される「元気がない」、「新しさがない」。
あるいは生活者の広告飛ばし。きっと、これ、コピーライターの責任だし
甘えですよね。悔しいけど、時代や市場に対しての力不足だと認めたい。
そのためには、やはりもっと時代や日常の生活、あるいは経済活動などに
目を向けていきたいと、僕は思っています。
などと、ものすごく偉そうなことを書いていますが、決してコピーライターの
皆さんに喧嘩を売りたいわけじゃやないし、僕自身の力なんてまったく
ないので、自分はできるなんて言っているつもりもありません。ただひとつ
言いたいことは、コピーライターの社会的役割を生むのも壊すのも、僕だし
僕たちだということ。
コピーライターに時代を築くのは、コピーライターなのです。
そんな広告界に足を踏み入れて、分かったこと。
会社を飛び越えて、大勢の仲間かつライバルと出会えたこと。
僕が以前受賞した宣伝会議賞の金・銀・銅トリオは、みんな同い年。
会社や置かれている環境は違えど、いまや全員TCC会員だし、全員パパです。
これからTCCの中でも輪を広げていけば、きっと色んな先輩や師匠、ライバルにも
出会えることでしょう。こんな素晴らしい交流って、他の業界や仕事では成立しない。
だから僕は、遠回りをしたけれども、この世界に入ったことをうれしく思っています。
留年も、営業も、記者も、すべての経験が、いまの僕をつくってくれました。
まだまだ未熟なコピーライターですが、いつか僕にしかない彩りを
社会に発していけたら。そんな思いで、これからも邁進していきたいと思っています。
そんなわけで、長い駄文を5日間失礼いたしました。
次は、中小企業の繁盛に全身全霊を注いでいる、パラドックス・クリエイティブの
田島洋之くんでございます。彼は先述の宣伝会議賞で金賞を受賞した同級生で、
最近はお子さんも生まれ、息子に顧客の社長から名前を頂戴するほど(ネタばらし?)
愛情を持って仕事に励まれています。精(子)力がすごいので、きっとパワフルな
話を披露してくれるでしょう。
ということで、ありがとうございました。
つかれた。。。