2024年個人的ベストコピー

このリレーコラムを読んでいる人は
おそらく広告業界に所属していたり
広告に興味のある方が大半だと思います。

そんなみなさまに聞きたいです。
今年のベストコピー、なんですか？

※ここで言っているのはご自分で書いたものではなく、
（もちろん自分で書いたものでもいいのですが）
この1年の間に出会って良い！と思ったコピーのことです。

私の個人的ベストコピーは
今年の1月の時点で決まってしまっていました。

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本気で
走る犬は、
速い。

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愛知県岡崎市にある「山田農園 畑のドッグラン」という
施設に掲げられているコピーです。

公式インスタでも写真を見ることができます。

私がこのコピーに出会ったのは、
Xでバズっていた
ぬいぐるみみたいなふわふわの犬が
カメラに向かって走ってくるループ映像でした。
ふわふわ犬ももちろんかわいい。
が、その背景に映り込むこのコピーに
思いきり撃ち抜かれてしまったんです。
え〜〜〜〜、良・・・・・・

感動しすぎて、
しばらくコピーライター仲間に
良すぎませんか？良すぎませんか？と
謎の布教をする女になっていました。

私は自分がぐっときた一文（広告でもそれ以外でも）を
ずーっと噛み噛み味わって
こんなところが素敵、あんなところが最高、を
紐解いていくのが好きなので、
こちらでも勝手に噛み噛みさせていただきます。

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①情緒的な言葉を使ってないところが、好き

このコピーで伝えたいことは
「愛犬をドッグランで走らせてあげましょう」なので、
もっとハッピーだったり、
エモーショナルな言葉選びもできたはず。
（脱線しますがペットに関するコピーって名作多いですよね。大好きなものがいっぱいあります）

それでも「本気で走る犬は、速い。」なんです。
当たり前の、なんてことない事実みたいな語り口。
沸騰したお湯は、熱い。
徹夜した朝は、眠い。
ぐらいの普遍性。
そもそも「本気」って書いてあるのでそりゃ速いだろうな、という感じなのですが
当たり前すぎてわざわざ言葉にされているのを見たことがありません。
それを突如でっかい文字で投げかけて、
受け手を一瞬動揺させるところが良い。
ちょっとした狂気すら感じます。

②実は犬への愛が詰まってるところが、好き

思い返すと、「本気で走る犬」って、
ドッグラン以外であんまり見たことない気がします。
私自身は犬を飼っていないので（飼ってないのかよ、って思いますよねすみません）
もっとも身近な犬は親族の家にいた雑種「茶々丸」でしたが、
彼は散歩中でも全力疾走したことがありません。
リードもあるし、人間に合わせてくれている感じで。
そんな茶々丸を、私は勝手にどんくさくて穏やかな子なんだと信じていました。
でも、彼の本気の走りってどれくらいだったんだろう？

このコピーは事実を語っているようで、
本気で走る犬の速さを君は見たことがあるか？と
そういう環境に置いてあげられているか？と
飼い主たちに問いかけているように思えます。
つまり、全犬への愛。（全犬、ってはじめて使ったな）
それが「うちの子も連れてってあげたい」とか
「なんかこのドッグラン楽しそう」という気持ちを
連れてきてくれるというか。

実際、Xでは動画に映り込んだこのコピーに反応している人が多くいたし、
この看板と愛犬がセットになるように撮影しているお客さんもいて
言葉が機能しているのをものすごく感じました。

③犬！である時点で、もう好き

ここまで書いてふと思ったのですが
「犬」という言葉がすでにめちゃくちゃ情緒を含むので、
①で言及した「情緒的な言葉を使ってない」という
私の感想は語弊がありますね。
むしろ「犬」の一文字が体温も湿度も背負ってくれているおかげで、
冷静な言葉遣いの中にチャーミングさを残せているのかも。
犬って偉大ですね。
お前それただ犬が好きなだけじゃんと思われるかもですが、
そんなことはありません。
犬の良さを最大限に引き出している
このコピーだから好きなんです。

＊＊＊

以上、後輩の山田くんからバトンを受け取った
伊藤みゆきがお届けしました。
山田くんと山田農園さんはまったくの無関係です。ややこしくてすみません。

このコピーを書いたのが、
コピーライターなのか、山田農園の方なのかわかりませんが、
とにかくお礼を言いたい、という一心で
バトンを受け取りました。

ので、更新はこれで最後かもしれません。
いや、もう1回くらい…？
そんなゆるゆるな週ですが、
どうぞよろしくおねがいします。
ありがとうございました。