父
はじめまして。永友です。
本来なら先月末にリレーコラムを書く予定でしたが、
折しも父が急逝してしまったために、
バトンを引き継ぐのが遅くなってしまいました。
今日は、父のことを書こうと思います。
享年59歳。心不全でした。
特に病気だったり、体調が特に悪いということもなかった父。
訃報を聞いたときは、全く信じられませんでした。
嘘だろ。そう思いながら、故郷の高知に急ぎ帰りました。
葬儀を終えた今でも、これは悪い夢なんじゃないかと、時々思います。
振り返ってみると、僕が言うのもなんですが、父は心温かい人でした。
四万十川に程近い僕の故郷はかなりの田舎で
飲み屋やバーに行くとほぼ知り合いに会うのですが、
顔なじみの若いやつらが飲んでいるのを見つけては、
父は「今日の飲み代は俺にツケとけよ」と言って
酩酊しながら店を後にしていました。
また、冷蔵庫にはいつも、たくさんのたこ焼きが冷凍されていました。
母が言うには、父は犬の散歩の途中で必ず、買って帰っていたそうです。
不景気で勤め先をクビになった20代前半の兄弟が始めたお店で、
そこのたこ焼きはあまり美味しくないことで評判なのですが、
「あいつらいいやつらなんだよな」と、ほぼ毎日買っていました。
どこか真面目だなあという印象が強い父ですが、
僕が大学生の頃に東京に遊びに来た際、そろそろお前もいいだろと、
某芸能事務所が経営している六本木のキャバクラに
連れてってもらったことがあります。
きれいなおねーちゃんと話してて、ふと父を見ると、
家族には見せたことがない笑顔をしていました。
そんな父は自分で商売をしていたのですが、
長男である僕に店を継がせようとせず、
地元に帰らなくていいから好きなことをやれと、
ずっとバックアップしてくれました。
今の仕事に就くことができたのは、父のおかげです。
そして、過剰に息子をほめるクセもありました。
TCCの受賞もそうですが、ことあるごとに、
俺は世界一幸せだ、お前は俺の誇りだと言い、
絵文字つきでメールを送ってくれました。
この親バカっぷりに恥ずかしくて照れがあり、
あまり受け入れられなかったのですが、
今考えると、誰にほめられるよりもうれしかった。
自分を肯定できる、そんな力をもらっていた気がします。
しかしこの夏、僕は世界で一番ほめてくれる人を、失ってしまいました。
葬儀の後、親孝行をほとんどできていなかったことを、痛切に後悔しました。
親父にとびきりうまいもんを食べさせたかった。
面白いところに連れて行きたかった。
嫁や孫の顔を見せたかった。
一度でもいいから、ふたりで飲みに行きたかった。
落ち込んでいた僕に対して、親しい友達が言ってくれました。
人間は肉体・魂・精神の3つの要素でできているんだと。
父は肉体を失ったけど、魂はあの世で、精神は僕だったり家族だったり
友人・知人といったいろんな人たちの中で生きている。
そう思うと、気持ちが少し楽になりました。
これからは、2回目の親孝行をしていきます。
父が過剰にほめてくれるような、そんな仕事を実現したいと思います。
リレコラ初日の今日は父のことを長々と書いてしまいましたが、
今週一週間、どうぞお付き合いください。よろしくお願いします。
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