ケッチョンのロケットパンチ
越澤太郎
池田君と僕が通った小学校は、
「合唱」に対して並々ならぬ熱意を持った学校でした。
特に音楽科の中村恵子先生はその総本山というか。
とにかく合唱指導には厳しい先生でした。
「歌」って、体育と一緒で、得意不得意とか好き嫌いが
結構はっきり出るものです。
僕は正直、苦手だし下手だし好きではありませんでした。
だから、よく中村先生には怒られてました。
中村姓の先生は2人いたので、
僕らがつけた影の愛称は「中村ケッチョン」(恵子、だから)。
ある授業で、どうにもクラス全体の合唱がうまくいかない時がありました。
イライラが募るケッチョン。徐々にやる気をなくす僕ら。
やるせなさがピークに達した瞬間、ケッチョンが叫びました。
「あんたら、そんないい加減やったら、先生の手、飛ぶよーー!!」
手が飛ぶ、すなわちビンタ張っちゃうわよワタシ、という意味ですが、
僕と池田君がその瞬間同時に連想したのは、
超合金マジンガーZのロケットパンチでした。
腕のサイドについているボタンを押すと発射されるロケットパンチ。
一回飛ばすと、もう一度手動ではめ直さなければいけないロケットパンチ。
中村先生、ロケットパンチが標準搭載なのかー。おっかねぇなあ。
以来、ケッチョンと言えばロケットパンチになりました。
大人になり、ロケットパンチに怯えることもなくなりました。
今では先生が生徒を殴れば、大問題になるようです。
体罰を助長する意はありませんが、でも、
あのロケットパンチで成長した部分も、きっとあるように思います。
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