円は異なもの、味なもの。
越澤太郎
小学校の頃を振り返ると、個性的な先生が多かった気がしますが、
中でも5、6年生で担任になった藤森先生は、
僕にも池田君にも強烈な印象を残した先生でした。
専門は算数。というか、すべてが算数的なんですね。
とにかく算数に対する愛情と情熱に溢れていて。
たしか算数だけ、他の教科よりも大きいノートを
僕たちは指定されていた気がします。
それは藤森先生の国語の授業中。動物の生態や特徴を語っている
教科書の文章を読んでいる時でした。
極寒の地に住むキツネなどの動物たちは、体の表面から熱が
奪われないよう、体を丸めて表面積を小さくする工夫をしている、
そんな趣旨の文章だったと思います。
突然、先生は私たちに問いかけます。
「体を丸めると、本当に表面積が小さくなるのだろうか?証明してみよう!」
国語の授業は、一瞬にして算数へと早変わり。
藁半紙やハサミを使いながら、国語の教科書に書かれた説明文の証明に、
みんなが取りかかりました。
本家算数の授業でも、「どうやったら円の面積を正確に測ることができるか?」
というテーマで、何日も議論した記憶があります。
芯のないトイレットペーパーの半径を切って広げれば、
計算できるのではないか?というアイデアも出てました。
「円は異なもの、味なもの。」は、この時の授業タイトル。
コピー、ですね。
単純に方程式覚えてオシマイ、で終わらない、
算数的数学的な深みある世界へ、
僕たちを連れていこうとしてたのかもしれません。
円周率も「およそ3」にしてしまう時代。
教育改革だなんだと世の中騒がしくもありますが、
藤森先生のように、時が経っても色あせない授業が、
まだ日本の教室に残っていて欲しいな、と思うばかりです。
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