まっすぐなコトバ
皇甫相太
一ヶ月ほど前だろうか。
久しぶりに、友人のKから連絡があった。
Kとは、中学からの付き合いだ。
大学までの10年間、同じラグビー部に所属し、ともに青春時代を過ごした、いちばん仲のいい友人である。
このKが、なかなか面白い男なのだ。
高校3年生の時のこと。
ある日、部活が始まる前に、Kがまじめな顔で相談してきた。
「黒人みたいな髪型にしたいんやけど、どうしたらええんやろか」
正直、知ったこっちゃない。
と言いたいとこだったが、それも素っ気ない気がしたので、
「俺が、刈ったろか?」
と、とりあえず冗談で返しておいた。
後日、部室の扉を開けると、
そこには、家庭用バリカンを手にしたKが、いい笑顔で立っていた。
1時間後、鏡を見たKは、興奮気味に叫んだ。
「黒人みたいや!めっさ、カッコええやんけ!」
失敗した後頭部は、見事な虎刈りになっていたのだが・・・
黙っておくことにした。ボクのためにも、彼のためにも。
卒業アルバムの撮影会、3日前のことだった。
今でも、アルバムの中では、「黒人みたいな髪型」だと信じて疑わない、いい笑顔でおさまるKの姿を確認することができる。
なかなか面白い男なのだ。
大学1年の時だったと思う。
Kと2人で、ストリップ劇場に行くことになった。
「DX伏見」。京都では、有名な劇場である。
初めて目の当たりにする、女性のマル秘な部分に感動し、妖艶なダンスに拍手を打った後、
踊り子さんとのポラロイド撮影を最高の笑顔で終わらせたKは、
その日、命の次に大切だと言っていたバイクを盗まれた。
新聞配達で貯めたお金で買った、愛車だった。
あの時のKの、切ない、いい表情が忘れられない。
なかなか面白い男なのだ。
今は、東京で商社勤めをしている。がんばっているようだ。
そのKからの、久しぶりの連絡だった。
「大阪に来ているから、久しぶりに飲みに行かへんか?」
BARで昔話に盛り上がっていると、バーテンが同級生ですか?と尋ねてきた。
私が、答えるより早く、Kが言った。
「親友やねん」
まっすぐなコトバだった。
あまりにまっすぐ過ぎて、ドキッとさせられた。
と同時に、何かうれしくもあった。
その回り道しないカンジが、爽快だった。
恥ずかしがることなく、サラリと、まっすぐなコトバを吐くK。
なかなか面白い男なのだ。
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