リレーコラムについて

毎日が勝負パンツ

関一行

コピーライター成り立ての人、これから目指す人、素人投稿シリーズを読んでいたら自分の若い頃を思い出した。

あの頃、
辛いこともあった……。 が、よく笑った。
睡眠時間はないに等しかった…..。 が、ほんとみんな集まっちゃバカやっていた。

ふと、こんなことを思い出した。
時代はバブル。某代理店 H報堂・安藤輝彦組の新年会。
ところは、人形町の由緒ある老舗のすき焼き屋。
ふつうだと、じゃあ美味しいすき焼きを食べて今年もガンバロウ!ということになるのだが、あまいあまい。安藤組はふつうじゃない。

すき焼き屋に一台のデジタル・ヘルスメーターが持ち込まれた。
上司命令で、わざわざ重ーいヘルスメーターを会社から運んできたのは当時新人、昨年CMプロダクション『DNA』を立ち上げた岡田知之。

なにがはじまるの?って、
『これから2時間の間で、だれが一番太れるか!』の競争である。

1等賞には、定かではないが、そうとうな賞金が与えられたと記憶する。
(なにせ安藤組は、これに先立って行われた香港忘年会旅行でも、なんと2泊3日で、この競争をしている。)

まず、始まる前にそれぞれ厳正な計量が行われる。
この前にトイレに行って水分を出しておくことが勝つための基本。小だけではなく、がんばって大をするものもいる。なかにはそれ以外の水分も出したのではないかと疑惑視された人もいた。昨年TCC新人賞を受賞した東芝の広告でADをやっている丸山幸夫氏が、その人である。

そして、計量が終わると、いざ、勝負なのだが…..。
その前にこの競争、ただ数字的に一番増えたものが勝ちというのはおかしいのではないか、という意見が出された。そう異を唱えたのが現在 新会社『H報堂イン・プログレス』の取締役でCDの八幡功一(当時コピーライター)。
彼の意見は、こうだ。背の高いヤツと低いヤツでは、胃の大きさも、腸の長さも違う。要するに収納する箱がもともと違うのだからハンデが必要なんじゃないか!というものである。彼のへ理屈とも思えるこの理論に、へ理屈で言い返すこともめんどクサく、結局ハンデを採用。計量後、いかがわしい計算式に体重(数字)がはめ込まれてハンデが決定された。背のあるボクなんか途端に不利に。

さあ、試合開始。2時間に渡る勝負の幕が切って落とされた。
戦法は大きく分けて2とおり。シンプルに肉を喰いまくる派と。ビールをガンガン飲んで水分で体重を増やそうという派。前者は、いくらうまい老舗の肉といえども、そうは喰えないというところが難点。後者は、ビールならいくらでも飲めるという者でも、後半オシッコという敵と戦わなくてはならないところが難点。

意表をついたのが現在プレーステーション等の広告でおなじみのコピーライター小霜和也。いきなりの『お茶漬け』戦法。こーんな美味しいすき焼きを前に、しょっぱなから「おねえさん、お茶漬けくださ〜い。」だって。おねえさんも「え、もうお茶漬けですか?すき焼きお口にあいませんの?」………。

また、なんとも卑怯な作戦にでたのが安藤さん。途中ビールをあやまってズボンにこぼしたふりをして、体重増加を画策。その目にあまる卑劣な行為には非難が集中。

あと、10分で終了、なんて頃には、もう大変。
オシッコをガマンする男たちの悲鳴と、ぐったりとした表情で肉を見つめる者。
現在コピーライターと東大の研究員?の二足のわらじを履く弦間一雄などは、途中トイレに行ってしまった劣勢をいっきにを挽回しようと、やたらおねえさんにお茶を要求。追い込みに余念がない。
CMの宗形英作さんなんかはとっくに戦線離脱で傍観者になってるし…….。

てなわけで、数々のドラマが生まれる中、試合終了。そして再び計量へ。
結局、当時営業で日産を担当していた(後にJリーグの立ち上げに大活躍された)門馬數典氏が優勝。たしか瞬間で4〜5キロぐらい太ったんじゃないかなあ。すごいよね。
ボクも残り20分というところで辛抱ならずトイレにいってしまい敗退。でも、4位ぐらいだったんじゃないかなあ。

ああ、でもバカやってたなあ、あの頃。やっぱ楽しかったなあ、あの頃。
仕事でも、遊びでも、毎日勝負してたなあー。
そう、毎日『勝負パンツ』履いて過ごしていたってカンジだな。
でも、そうでなきゃクリエーターっていけないよね。
『勝負パンツを履いたサル』じゃないとね。

それにしても、もう一度、バブル来ないかなー!!

NO
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