リレーコラムについて

魚のはなし

川上毅

ナマズを飼っていました。
阪神大震災の朝も。
家は神戸から離れた堺でしたが
それでも経験したことのない大きな揺れで目を覚ましました。
揺れがおさまったあとの静かな部屋に
水槽が激しく波打つ音だけが響いていたのを生々しく覚えています。
そして地震を予知するはずのナマズはというと、
微動だにせず眠り続けている。
きみ、ここ活躍しどころよ。
ペットは飼い主に似るといいますが、
チャンスで打てないナマズ。ちょっと切なかったです。

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僕の特技は、注射器で魚の採血をすることです。
大学の水産生物学研究室というところで身につけました。
その研究室には吉冨くんという同級生がいて、今でも僕の友人です。
彼は大学の准教授をしておりますが、
このたび「魚のウロコのはなし」という本を上梓しました。
日本でウロコを本格的に研究してるのは彼ぐらいなものらしいです。
しかし「かつてウロコを研究していた」という人なら存在するらしく
そのお宅を訪ねたそうです(なんと偶然にも近所だった!)
伺うと、その先生は開口一番
「あんたみたいな人がそろそろ現れる頃やと思っておったわ」と。
ウロコ研究者ってのは、
それこそウロコの年輪みたいに周期ごとに出現するみたいです。
吉冨くんも引退したら、新たな研究者を待ち続けるのでしょうか。
ウロコのリレー、ちょっとロマンだと思います。

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と、魚のことを書いてますが
実は僕は釣りがすごくへたくそです。
見事なくらい釣れません。
飲み友だちのバイク屋さん夫婦に、いつも笑われています。
一緒に渓流釣りに行ったときのこと、
到着するやいなや奥さんが「ウンチしたい」と言い出しまして。
でもその旦那さんは釣りになると夢中です。
優しい僕は、奥さんを車に乗せてトイレまで。
事なきを得て戻ってみると、もう釣り上げてるじゃないですか。
渓流って朝一番の新鮮なポイントが釣りやすいんですよ。
あれは絶対に僕が釣るはずだった魚に違いありません。
その日も結局釣れなかったけど、あの魚は僕のです。
そして僕は、またバイク屋さん夫婦に笑われましたが
ふつう笑うか?恩人を!
いつかウンチで痛い目にあえばいいのに。

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