ウルトラばあちゃん
生まれ育った家は、築50年くらいの古い家でした。
京都の町屋造りと言って、長屋のように細く、
奥に小さな庭がありました。
でもその家・・・
子供にとっては恐ろしい家で。
なぜなら、
便所が庭にあるので、
夜中、用をたすときに、
うす暗い中、植木をかきわけ
外に出なくてはいけなかったのです。
そんなある夜。
夜中トイレすました後で、
手を洗おうと蛇口をひねろうとしたら、
むにゅ・・・と
変なものに触った感じがしたのです。
便所の裸電球をたよりに
指先のほうを覗き込んでみると、
な、なんと、
でっかいナメクジ!
ふつうのナメクジの3倍くらい巨大で、
むにゅむにゅ、むにゅむにゅ・・・
蛇口にまとわりつくように、
動いていて、それにさわってしまったのです。
「わーっ!!!!」
子供の僕は、大声で叫んで、超スピードで走って
部屋にもどって来ました。
すると、
「どないしたんや?」
と、おばあちゃんが出てきて、
「ここに、ここに、指に、
なめくじ、なめくじ・・・さわってしもたー!
うえぇ-ん、ひくひく、うえぇーん・・・」
と、泣きべそかいていると、
「どこや?」
と、ナメクジのいた蛇口の所に行き、
「これか?」
「うん・・」
「昔はなぁ、ナメクジは心臓にええ言うて、食べてたんやで。」
「うそやー!」
「うそちゃう。戦争中みたいに、
なんも食べるもんがないときは、ごちそうやったわぁ。」
と、言う。おばあちゃん。
「ぜったいうそやー!うえぇーん・・・ 」
泣きやまない僕を見ながら、おばあちゃんは、
「ほんまやで・・・」
と言って・・・次の瞬間、
蛇口にはりついた、その巨大ナメクジを、
素手で、ちょぃと、つかんだかと思うと、
洗面所の水道をひねって、シャシャ!っと水洗いして、
ぱくっ!って、食べてしまったんです。
な、な、生で!
で、、、数秒もぐもぐしたあと、
僕に向かって、
あ〜〜っと、口を大きく開けて、
「ほんまやろ〜!!」
って、なめくじを飲み込んだことを、
僕にアピールしたんです。
僕は、それを見て、
さらに激しく泣きました。
・・・僕はいくつになっても、
あの偉大な、ウルトラばあちゃんを超えることは
できないでしょう。
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