唇寒し
平山浩司
あれは誰が言ったんだっけなぁ。高名なスポーツ評論家だったと思うが、その人曰く「野球の記事とかで、貯金とか借金とか言うけど、スポーツをそんなビジネスの言葉で語られると嫌な気持ちになる、云々」常々、20世紀の後半から現在にかけて、これほど経済、ビジネスというものに価値が置かれた時代ってないんじゃないか、おかしい、と居心地の悪さを感じていたもんだから、我が意を得たりと思った。が、と同時に、待てよ、コピーライターも、意外とこうした言葉への感度は低いのではないかという気がしてきた。それは、言葉を生業にしているにも関わらず、実のところ自分の言葉で語っていないからじゃないか。その昔「思想の密輸入者」という、この国における思想の借り物ぶりを揶揄する警句があったが、コピーライター、広告クリエーターも十年一日やれ「ブランディング」だ、ほれ「インサイト」だ、とジャーゴンにのっそりべったり寄りかかり、得々として自らを語ってきた。そんなお粗末な仕事ぶりからそろそろ足を洗わないと、この稼業がなんてことないモンキービジネスだということが世間にバレてしまう。
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