次の男
2時過ぎに電話する。
「何だこのコピーは!書き直せ!」
「分かりました」
7時30分に電話する。
「何で最初からこれを書かない!」
「次からそうします」
夜中から朝にかけて、
1年半の間、僕たちはこれを繰り返した。
僕と違って、彼は感情を表に出さない。
2chに僕の悪口を彼が書いていると誰かが言った。
そんなことはどうでもよかった。
寡黙な者だけが有する根性と野心が彼の中にはあった。
彼のおかげで、僕もCDとして伸びていった。
僕らの短い夜がはじまった2年後、
彼は正しい努力で得た地力と運でTCC新人賞を獲った。
お祝いに超一流の寿司を食べに行った。
相変わらず彼は寡黙だったが、
仕返しのように大トロだけを注文し続けた。
来週からこのコラムを書く彼が、
オグルヴィ&メイザー・ジャパンの大トロ・コピーライター松井亘平です。