リレーコラムについて

野球選手、桑田真澄の引退。

藤崎実

桑田真澄が引退を決めた。

昨年の「江川・小林の対談CM」は広告の歴史上類のない、
番組もCMも超えたスゴイものでした。

存在そのものが新しく、昨年の僕のベストワンなのですが、
そもそも「空白の一日」を知らない人にとっては、
何のことか全くわからなかったと思います。

だから桑田の引退表明も、感慨を持つ人と全く無関心な人に、
完全に分かれるのではないでしょうか。

  ◆◆

PL学園のKKコンビ、
1年生どうしのエース・桑田と4番・清原。
あの甲子園での2人はまぶしかった。
口にすると恥ずかしい青春とか友情とかを体現している2人に
誰もが拍手を贈ったことだろう。

だからドラフト会議の結果には誰もが衝撃を受けたし、
どちらも喜べない2つの記者会見は悲痛だった。
何とも言えない表情の桑田と涙の清原。
学生服には何と辛かったことだろう。

でもその時、多くの人が予感したはずだ。
本当の物語はここから始まるのだ、と。

  ◆◆

僕はご多分に漏れず、子供の頃から本が好きだったが、
子供ゴコロに思ったことがある。

「この物語はここで終わるのではなく、続きがあるはずだ」

もちろんお話はひとつの結末を迎える。
がしかし、例えそれがハッピーエンドだとしても、
主人公の人生がそこで終わるわけではない。
単にひとつのエピソードが終わったに過ぎない。

人生はもっと長いし、もっといろんなことがあるはず。
だから最後の最後まで物語は続くし、
本は一冊ではなく、何冊にもなるはずだ。

  ◆◆

いきなり話が飛ぶが、ダグラス・トランブルの傑作映画で
ナタリー・ウッドの遺作でもある「ブレインストーム」を、
今は亡き有楽座の70mmの大画面で見た時のことだ。

「人の死」を追体験するシーンで、
その人の人生が大パノラマで一望されるクライマックスに
僕は涙が止まらなかった。

死を迎えるにあたり振り返ると、
さまざまな思い出がエピソードごとに固まりになって
空間に無数に連なっている。
そのイメージの何と美しいことか。

その時、僕はハッキリと言葉にできた。
「人生はエピソードの積み重ね」

  ◆◆

入団後、2人の物語はどんどん続いていった。

そして一時代を経て、桑田と再び同じチームとなった清原。
どんなにうれしかったことだろう。
僕には2人の気持ちは計り知れない。

  ◆◆

残念ながら実現には至らなかったけど、
桑田が日本人最年長でメジャーデビューを果たした年、
清原との共演企画を考えた。

人生に大切な勇気とか、普遍とか、挑戦とか、別れとか、
とにかくいろんなものを思い出すCMにしたかった。

  ◆◆

選手としての桑田は引退するが、
桑田の新しい物語は、これから始まる。
応援したいとココロから思う。
桑田はとにかくカッコいい。

  ◆◆

人生はエピソードの積み重ね。
結局人生では辛かったことはいつしか消え去り
うれしいことしか残っていかない気がする。

だから、このエッセイを読んで頂いているみなさんにも、
うれしいことがいっぱいありますように。

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