悪口
高崎さんはみんなから
ジャイアンって呼ばれてたりしますが、
じつはちっちゃい男なんですよ。
若い子たちの大将的存在だからジャイアン。
障害物をなぎたおして広告を作り続けるからジャイアン。
身長180センチだからジャイアン。
そんな、ちょっとかっこいい文脈から
ジャイアンって呼ばれてると思い込んでいたら、
じつはちがったんですよ。
高崎さんは音痴なんです。
先日、とあるクライアントにいっしょに
演出コンテプレゼンに行ったとき。
うたものだったので、PPMを待ちきれずに
クライアントがどんなメロディなのかを知りたがりました。
「高崎さん、ちょっと歌ってみてくださいよ☆」
うれしそうにおねだりするクライアント。
もうかなり曲はできていたので披露すればいいものの、
高崎さんはかたくなに歌おうとしません。
盛りさがるクライアント。
きっと制作のクオリティに関わる
深遠な理由があるのだと思って、
わたしも口をはさむことを控えていました。
でも単に音痴で歌いたくなかったんですって。
クライアントファーストの世界では、
あるまじき行為ですよね。
ちっちゃい男です。
本当のジャイアンを見習ってほしいです。
音痴でも堂々と歌っています。
「この世には強い男なんていない。
強いふりをしている男がいるだけさ。」
そんないつか読んだ小説の一節が頭をよぎり
すぐに消えておなかがへったので吉野家に入りました。
でもなんで気弱で従順な私が
無理にこんな話をしているかといえば、
ジャイアンに「おまえ、次、リレーコラムかけよな!
それも、おれの悪口からな!」
と、おどされているからです。
これはつまりジャイアンの手のひらの上で
書かれているリレーコラムであり、
本当の本当はおそろしいジャイアンっぷりなのです。
でもなんでそんな命令を?
叱ってくれる人がいなくなった成功者の孤独?
本当に書くかどうか忠誠心のテスト?
SにあきてMを開拓?
わたしには荷が重いとも思ったのですが、
わたしも最近Mにあきてきたので引き受けました。
堂々と言う悪口って、気持ちいいもんですね。
クセになりそうです。