何考えて作ってるか(暴論)
広告を作っているときに、なんとなく思っていることとして、
作る、というひとつの作業の中にも、実は三つのパートがある。
ってのがあります。
ひとつはプレゼン。
ひとつは実制作。
もうひとつはそれが世の中に出た後。
それぞれが本当は種類の違う仕事で、
人によって、どこに興味があるか。どこが得意なのか、
それが違うように思います。
その違いってのが、意外に大事で、
だけどそれを気にしてる人はあんまりいないような気がします。
私の場合、一番好きなのはプレゼンです。
なんだよ。そんなの一番めんどくさいとこじゃん。と思われるでしょうが、
クライアントからの課題があって、今の世の中の空気みたいのがあって、
それをいろいろ考えて、クライアントとの心理的な駆け引きがあって、
自分のやりたいことを実現させる、というところがおもしろい。
大変そうに見えても、そこまでの相手はクライアントだけなので、
そこの読み、とか、駆け引きは意外にシンプルです。
実制作のパート、これはいかにおもしろいものを作るか、なので、
これが好きでやっている、という人が一番多いでしょう。
おもしろいものを作る人はここが上手な人が多い。当然ですね。
もうひとつの、それが世の中に出た後、ってのは、
世の中に出たあと、やることなんかないじゃないか。…ではあるのですが、
本当に大切なのはここだったりします。
ここが好きな人は、ここからすべてを逆算するので、
うまくいくと、世の中を動かすすごいものを作ることができます。
この三つは、決して時系列ではありません。
世の中に出た後のことを考えて、企画をし、プレゼンをする。
それをいかにおもしろく作るかを考える。すべてはつながっています。
しかし、通常の作業では、ついつい自分の好きなところでだけを考えて、
そこだけがんばる、ということが多い。
たとえば、自分がおもしろいと思うものを全力でつくる。
ここだけがんばって、納品したらもう忘れてしまう。みたいなこと。
クライアントとのやりとりに忙殺されて、
そこを通すことだけが目的になってしまうこと。
センスがよくて、すごくおもしろいものを作ることができれば、
そのおもしろさですべてを突破して、結果的に大ヒットすることがあります。
これはとてつもない快感で、こんなに楽しいことはありません。
しかし、それってひょっとすると偶然かもしれない。
その人の感覚がすぐれていれば、計算することなく時代の空気を読んで、
無意識のうちに世の中が求めているものを作ったのかもしれません。
だけどこれは、感覚だのみ…なので、自分の感覚が旬からちょっとでもずれれば、
すぐに当たらなくなります。
おもしろいものを作ることをとにかくめざす人は、
賞獲りに傾きがち、でもあります。
賞、ってのは、審査員とのコミュニケーションなので、
実際のユーザーや、その商品が売れるかどうか、ということよりも、
その表現が新しいかどうか、突き抜けてるかどうか、の比重が大きい。
こんなことを言うと審査員の方々に怒られそうですが、
逆に言うと、いくら商品が売れて、それが広告の効果だったとしても、
表現的に陳腐であれば、賞を取ることはできない、ということです。
自分がクリエーターとして、自分が成長していく上でどこにポイントを置くか。
賞を取って、自分のステイタスを上げていくのもひとつの道です。
商品を売りまくってクライアントの信頼を得るのもひとつの道。
その中で、やっぱり目指したいのは、自分が発信するもので、世の中が動く。
そのカタルシスが一番でっかいように思います。
自分のことで言えば、
世の中のことを考えて、今何をどう伝えていくべきかを考える。
今の世の中ってどうなのか、については、いつも考えてはいますが、
まあ、歳も歳なので、自分の感覚だけを鵜呑みにしない。
作るときも同じです。自分のおもしろさには限界があるから、
そこはチームで考えます。
とは言え、やっぱり自分がおもしろいと信じられるものにしか、
いい悪いの判断は下せません。
自分がおもしろいと思えるものが、世の中の求めるものと一致したとき、
やっと、ヒットするものを作ることができる…ように思います。
まあ、なかなかそういうことはないんですが。
そんな中、できるだけ、偶然に頼らずに、狙って作りたい。
それだけは思っています。
今回のリレーコラムは、読み返してみても、実に偉そう。
いやいや、ホントはこういうキャラじゃないんですけど…。
実はいま、なんやかんやで講演することが多くて、
その原稿をまとめたりしてるから、こうなっちゃったんですね。
練習台に使用させていただいてしまいました。申し訳ありません。
来週は、篠原誠くんにお願いしました。
ボクの部下ですが、今日言った三つのバランスが
ボクのまわりでは、一番取れている人だと思っています。
あ、余談ですが、オグリビーの松尾くんがこのコラムを読んでくれていて、
ボクも弟子の一人として紹介してくれていい、と言ってくれました。
彼も、すごく短い間でしたが、ボクの下にいました。
ホントに優秀な人が育っていくんだよな。なんにもしてないんだけど。
やっぱそれがいいのかな。
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