蒙古襲来
きょうはモンゴルでのお話。
モンゴルの首都、ウランバートルに夜遅く到着し、ホテルを探していた時のこと。
目当てのホテルがなかなかみつからない。地図に載っている通りに来ているのに、そこにはマンションがあるだけ。おかしいなと路上に座って地図をみていると、向こうから嫌な感じの男たちが近づいてた。大声で叫んでいる4人組、片手にはウォッカを持っている。目を合わせないようにと地図を凝視し、通り過ぎるのを待っていた。しかし、ぽんと肩をたたかれる。やっぱり絡まれてしまった。
彼らには英語が全く通じない。ぼくは全くモンゴル語がわからない。「ホテルを探してるんだ」とジェスチャーしてみたが、通じない。だんだんいやな感じになってきた。先方は恐喝モードになりつつある。逃げようにも4人に囲まれてるし、話そうにも共通言語が全くない。なんとかその場を和ませよう、何かコミュニケーションをとろう、と頭をフル回転していたら、ひとつの共通言語がみつかった。「チンギスハーン」である。
「チンギスハーン ! グッド! チンギスハーン ! グッド! 」
両手の親指を立たせながら、満面の笑みで先方の偉人をほめてみた。
どうやら通じたようだ。ウォッカをぼくに差し出してきた。
ウォッカを飲んだ。強烈!ゲホゲホと咳き込んだ。そんなぼくを見てみんなが笑った。
おっ、よいムードになってきたぞ。
ぼくはさらに追い打ちをかけた。
「フビライハーン! グッド! フビライハーン! グッド!」
しかし、先方は怪訝な顔をするばかり。何の反応もない。
フビライを知らないのか?そうか、発音が違うのかもしれない。
「クビライハーン! グッド! クビライハーン! グッド!」
と発音を変えてみたけれど、4人は怪訝な顔をしたままである。
チンギスハーンの孫であり、元王朝をつくった偉大なるクビライをモンゴル人は知らないのか、大丈夫なのか、モンゴルの教育水準。くそぅ。
「チンギスハーン !チンギスハーン ! 」
もう一度、偉大なる名をコールしたが、もう効き目はない。
和やかだった空気はまた恐喝モードへとかわった。
結局4名の方に10ドルずつ。計40ドルほど献上し、ぼくは解放された。
インドで「ガンジー! グッド!」
パキスタンで「ジンナー! グッド!」と言ったことがある。
その時も危機を回避できなかった。
「ノブナガ スゴイデス!」「フクダ サイコウ!」
外国人に言われているようなものか。
全然うれしくないや。
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