18歳の選択
「あ〜、だりー…」。
それが高校時代のぼくの口癖だった。
いかにヘアースタイルをビシッときめるか。
いかにぶっとーいズボンを先生に細く見せられるか。
いかに女の子とあんなことやこんなことをするか。
3年間、そんなことばかり考えて生きていた。
なーんも、ない。
そんな言葉が似合う高校生活だった。
それもそのはず、男ばかりの生徒でいったい何がおきようか。
みーんな、タッチの南ちゃんのような子が突然目の前にあらわれて、
あんなことやこんなことしたーい。と思っていても、
隣にいるのは、目つきの悪いただの男。
おきるとすれば、
「おらおらおら〜!!」
と、まるで、政治家の選挙演説のように、何度も同じ言葉をくりかえし、
まるで退屈な日々を発散するようにケンカするだけ。
あほである。
そんな高校生活にも、進路という、
久しぶりに頭を使わなければいけない問題がやってきた。
進学か、就職か。
もちろん、母に、大学は行かせられないから。
と言われ工業高校に進んだぼくは、就職しなくてはいけない。
問題は、どんな仕事につくかだ。
普通、3年間、建築科で建築を学んだのだから、
建築方面の会社に進むのが常識だ。
ただ、その3年間でぼくが学んだことは、
建築だけは、ムリ〜。
ってことだけだった。
どーしよう…。また選択の嵐だ。
その学校は、職員室に数多くの就職先が書いてあるファイルが置いてあった。
そこから、生徒は好きな会社を選んで応募する。
ぼくも、毎日、食い入るようにそれを見た。
あんなに一生懸命にひとつのものを見たのは、
夜中にみんなに内緒で買ったエロ本以来だったと思う。
だけど、エロ本のように、この娘好みだなぁ〜。
っていうところがひとつもなかった。
どうしましょ、ぼくって。状態である。
それからしばらく同じことをし続け、無い頭をフル回転に稼働し、
でた結論。
役者になる。
今の自分だったら、はぁ?クスリでもやってんの?
大野がついに狂ったぞ。おーい!である。
ただ、その時はいたって真面目だった。
その頃放送していた「3年B組金八先生」にいたく感動し、
オレも生徒役になりたーい。金八っあぁぁぁ〜ん状態だったのである。
つまり、役者というよりも、3年B組の生徒になりたかったのである。
ただ、そんな馬鹿な思いを、誰もわかってくれるはずがなく、
親は怒り、先生は、まだ高校生のままでいる?どう?どう?大野君。
的な目でぼくを見て失笑していた。
そこで、ぼくがまた考えたのは、
とにかく東京だ。東京にいけば、なんとかなる。
という若者特有の無鉄砲な発想。とにかく東京に近ければどこでもいい。
仕事内容よりも、住所で会社を探していた。
ただ、そんな不純な動機では、どこも受かるはずがない。
面接官に
「君は、どうしてここを受けたんだね」
「はい。東京なんで」
「………」
では、どんなに面白い人材を探しているところでも受かりっこない。
全滅した。
ぼう然としているぼくに、しょうがねーな、ったく大野はよ〜。
って感じで、先生が地元のある事務機器メーカーを紹介してくれた。
「なんかここだと、設計とかデザインとか、
やらしてくれるみたいだから、ここにしろ」と。
それを聞いたぼくは、
「デザイン!お、デザイナー!なんかかっちょええなぁ」と、
今までの役者になりたい気持ちは吹き飛び、
その会社を受け、見事就職した。
その後で、またいくつかの試練が、まっているとは知らず。