リレーコラムについて

「現場にて」

波多野順

こんにちは。波多野です。
先日、人生のほとんどのことが苦手で、
そのなかでも学校生活が特に苦手だったと書きました。
学校生活は過去のことですが、現在の苦手なことといえば、実作業です。
自分の実務能力のなさには、つくづくどうしようもない人間だなと、
うんざりしてしまいます。
ボクはCMプランナーという仕事に就いていますので、
撮影現場に立ち会うことがあります。その現場での話しです。

ボクはロクな服をもっていないので、プレゼン時以外は、
かなりみすぼらしい格好をしています。
その撮影のときもTシャツに短パンでした。
けっこう大掛かりなロケで、人手がいくらあっても足りないような現場でした。
なにかお手伝いしなければと考えたボクは、荷物を運んだり、穴を掘ったり、
単純な作業をすることにしました。
ところが、それが思ったより難しく、うまくいきません。
というか、若い照明の助手の方に、こっぴどく叱られ続けました。
「ちゃんとカメラの向きを考えて穴を掘らんと、意味なかろうが!」
「それ、ゴミじゃないとぜ!動かすな!!」
「その土、残してもしょうがないけん、全部使え!」などなど。

8年間のCMプランナー生活で、現場でそんなに怒られたことがなかったので、
とても新鮮に感じ、若い助手さんなのに職人気質の気骨のある方だなと、
ビビリながらも、畏敬の念を感じはじめていました。

そして撮影は無事に終了。みなさんと談笑していると、
照明の技師さん(助手さんの上司の方)がやってきました。
そして、「波多野さん、すみませんでした。」と唐突に。
なんのことかわからないボクが、「なにがですか?」と聞きかえすと、
「アイツ、波多野さんのこと、制作進行のアルバイト学生と間違えてたみたいなんです。」と。
現場は大爆笑。その日の打ち上げは、今までで一番たのしかったです。

きっと、まぎらわしい格好のボクがいけないんだと思います。
でも、ロクな服もってないんです。

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