見てはいけない〜前篇
前回の杉山くんが「AVの話が反響あって良かったっす」と得意げにしていた。
「フン。そりゃエロに振った方が目立つさ」と冷笑したが、すぐ考え直してAVの話をすることにした。
半年前、私はインドの片田舎の農村に身を置いていた。そこで知り合ったのがラチャ。25歳のハンサムな若者だ。
そんなラチャが
「ハスモト(上手く発音できていない) お前、オレの友達。だからオレの宝物、見せる」
と棚の奥から一枚のDVDを取り出した。彼の淫靡な笑みに、すぐアダルトだと気づく。
私は内心ガッカリした。正直、インドのAVが、日本の高度に進化したAVに勝てるはずがないからである。しかし、そのDVDはいわば彼と私との友情の証。だから彼のプライドを傷つけないために、興味津々な様子を私は装った。
「観たい、観たい!」
迫真の演技が功を奏し、得意げに胸を張るラチャ。
「これ、ジャパニー(日本)の親友が送ってくれたエロエロね。まだ私も観ていない、とっておきね」
「凄い! 早く観よう」
ますますハイテンションな自分を演じる私。それを悠然と制するラチャ。
「慌てるな、ハスモト。うちにはDVDデッキがないね。けど、友達の家にはあるね。今日、そこに一緒に行くね」
私はDVDを手に取る。タイトルが直にマジックで書かれている。私は驚愕した。
どうみてもスカ●ロものなのである。
ラチャは日本語が読めない。ラチャの親友は、彼に悪ふざけでこのDVDを送ってきたのである。もし中身を観たら、彼は友人に裏切られたことに深く傷ついてしまうだろう。
「このDVDを再生させてはならない」
そう決意する私に向かって、ラチャが言った。
「じゃあ、そろそろ行くね」
続く。
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