隣のインド人
逆ナンされた。
西麻布の交差点。午前1時ごろ。タクシーを拾って、さぁ帰宅というときに
「スミマセン。ここらへんで、女の子でひとりで安心BAR、ゴザイマスカ?」
日本語を習っているという、インドからの留学生。可愛らしい子だった。
西麻布はとても安全な街であるが、時間が時間だ。
なじみのBARの場所と電話番号を教え、帰ろうとしたところ
「一緒に行くの、ダメ?」
つぶらな瞳、上半身をちょっと捻って、ジャケットの端を軽くつまんでくる。
あちゃー、やっちまったなぁ。
散々飲んだ後だが、交差点近くのBARに向かった。
(現場の加藤さんが得た不確定情報)
インドのデリー出身。留学生。日本には小学生のころから住んでいる。お父さんは外交官。出版社で働いてる。イラストレーター。名詞は渡せない、でもあなたのは欲しい。西麻布に住んでいる。お笑い芸人によくナンパされる。僕のことを最初お笑い芸人だと思った。
BARに着くまでの約5分間で知った、彼女のエピソード。
はっきり言ってメチャクチャである。
席に着くと、彼女は強めのスピリットを頼んだ。
お酒は好きだけど、強くないはず。いまさら、どうでもいいけど。
「お腹がすいているの。SEXYなものが食べた〜い」
ピクルスとピザを反射的に頼んだ、SEXYかどうかは、よくわからない。
料理が運ばれてくると
「あっ、田中さん。また来ちゃった」
じょ、じょ、常連かよッー。
「昨日はさ〜、けっこうキテたよne〜」
あいすいません。私が悪うございました。愛する妻よ、愚かな僕を叱っておくれ。
帰りのタクシーで心を入れ替えて、明日から新しい人生を始めます。
さっ、とっとと、帰ろう帰ろう。するとインドの女性は携帯を取り出して
「だからさぁ、言ったでしょ。〇▲×□××◎」
怒声に近い声、たぶんポルトガル語。ノゲイラといっしょ。て、言うか、あなたナニ人?
店内のBGMが明るいPOPSに変わる。
「あっ、この曲好き」と
自称インド人は、その場で踊りはじめた。電話での言い争いはつづいている。
ダンス怒声ダンスダンスsmile怒声怒声ゲップsmileピースダンス
ダンスダンスダンスあっどうもブラチラいやーんsmile怒声怒声ダンス…
一刻も早くここから逃げ出そうと会計用のカードを強く握りしめた
僕の脳内では戸川純さんのあの名曲が延々とループしている。
♪隣のインド人 なにしてるの〜♪
明日、第3回目は『中田ヒデへ』です。Don’t think feel