なんとはなしに(1)
小池麻美子
古語が好きでよく使う。
といっても、四六時中しゃべっているわけではなく、
たいていは“べし”や“まじ”といった語尾だけ。
“べし”は、「報告書は月末までに提出すべし」など今でも命令の意味でよく使われているが
私は、強い意志を示すために使う。たとえば、夜に予定があるのに宿題がたまっている
休日の朝などに「さ、ちゃっちゃとやるべし!」と、気合を込めて声に出す。
“べし”以上によく使うのは、べしの否定形(強い否定の意志)“まじ”だ。
大好きなアイスを連日食べてしまったあと「もう今日はアイス食べるまじ」と、つぶやく。
打ち合わせのあと「いけちん(←営業のあだ名)、許すまじ!」と、CDに愚痴を言う。
これは現代語にすると「アイツ、ぜってー許さねぇ!」となるわけで、
とたんに、私にはとても使えたものではなくなってしまう。
語尾をあげて話すなど断定することを避け、なにかと曖昧にする現代語とちがい、
古語は、はっきりと伝わることを恐れていない。
それは、コミュニケーションの手段が対面どころか文(フミ)しかなかったためだろうが、
潔くて、かっこいい。
私が古語を使うのは、たぶん勇敢でありたいと思っているからだ。
もともと一人っ子だったせいか、人の顔色を伺うクセがあり、
そのクセが抜けはじめたのと古語を使いはじめたのは同じ頃ではないか、と思う。
古語は私を勇ましくしてくれる。
そのスイッチは絶対に必要だ。
だって、自分のコトバに対する信頼が必要なこの仕事には、どうしたって勇気がいるもの。
あー、それにしても、マジこの宿題あるまじ!
*
今週コラムを担当させていただきます、08年度入会、ADKの小池麻美子と申します。
一週間、日常のあれこれを、なんとはなしに書いてみようと思っています。
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