「うみ」のはなし。
横浜新道から横浜横須賀道路を南下し、
阿部倉山を越えて葉山町に入ると、風は突然吹きはじめる。
車の窓は閉まっているが、
山の木々がざわざわと音を立てているのがわかる。
今週コラムを担当させていただきます、
08年入会、東急エージェンシーの西尾ヒロユキです。
コピーライターですが、ヨットマンでもあります。
艇は、ヤマハ30(スカンピ)。
30年経った今も現役の名艇です。
その昔、
欧州「ハーフトンレース」に参加するや優勝をさらい、
71年米国のSORCに出場、参加最小でありながら、
強烈な上り強風の中、
大型クラスの各艇を抜き去る快挙。
強風のスカンピとして名声をあげました。
しかし今ではマリーナのレースに出ると、
いつもビリか、ブービーか、時間切れ失格。
最近のヨットは軽量化され、
我が老艇は抜き去られてばかりです。
そんな老艇にも、武器はあります。
それは吹いても腰が強く、
直進性に優れていることです。
最新のヨットは波に乗りますが、スカンピは波を切ります。
強風が吹くたびに、
武器を持つことの大切さを老艇は教えてくれます。
武器を持つことは、戦う力を持つことです。
一撃必殺の武器もあれば、
じんわりと知らず知らずのうちに効いてくる武器もある。
武器を持った仲間を集められる力も、また武器だと言えます。
武器を持っていれば、戦わずに勝つこともできます。
戦わずに勝つことは、最高の戦い方であり、勝ち方だと僕は思う。
岩崎俊一事務所の米田さんからバトンを渡されたので、
この一週間じぶんの武器はなんだろう、あの人の武器はなんだろう、
と考えながらがんばって走ります。