リレーコラムについて

女性を信じちゃいけない話。

宮寺信之

 私は、少し嫌な気持ちになった。
正しく言えば、妙な予感と、そんな迷信めいたものにココロを
支配されるなんて格好悪いという理性に挟まれて、
どちら側かにカタンと傾ききってしまえない
シーソーに酔ってしまったような気持ち悪さ。
あのマフラーをなくして以来、身の回りに起こる
些細な不幸のような、小さな不運のような連続。
そして、あの紺地に臙脂の縞のマフラーに私の手を伸ばさせた
ある成功者の呪文のような言葉。
今年は、赤が入ってるマフラーが最高運です。
私は、マフラーをあきらめるのをやめた。
 なくしたと思われるクライアントのビルに2週間ぶりに訪れることになった。
あの日、マフラーをなくしたと言う私の言葉を聞き、クライアントに
探してくださいと電話をかけてくれたチエさんと一緒だ。
チエさん。万が一、ないか、もう一度、受付で尋ねてもらってもいいかな。
私は、安物のマフラーにこだわる格好悪さを誤摩化すように言葉をつづけた。
あれをなくしてから、なんか運まで落っこっちゃった感じなんだよね。
受付からチエさんが戻ってきた。
あるみたいです。えっ!?あったみたいですよ。
 別の場所にとりにいくと、マフラーが私を待っていた。
チエさん。どういうことなの?
なくしたと思ったあの日、本当にクライアントに電話してくれたの?
全部探してくれたけど、どこにもないそうです、って言ってたでしょう。
その言葉を信じて、一度はこの幸運のマフラーをあきらめようとしたのに。
私は、そう言いかけて。
マフラーあって、よかったですね。
チエさんの笑顔を見て、ごめんと思った。(つづく)

NO
年月日
名前
5805 2024.11.22 中川英明 エキセントリック師匠
5804 2024.11.21 中川英明 いいんですか、やなせ先生
5803 2024.11.20 中川英明 わたしのオムツを替えないで
5802 2024.11.19 中川英明 ドンセンパンチの破壊力
5801 2024.11.18 中川英明 育児フォリ・ア・ドゥ
  • 年  月から   年  月まで