リレーコラムについて

たのし

萩原ゆか

息子たのし(4歳)が、メダカにエサをあげると言い出した。

子どもがする生き物の世話なんて、ものすごく気まぐれだ。
まかせておくと、間違いなくすぐ死んでしまうので、
普段はわたしが世話をしている。
カブトの幼虫なんて、最初は吐きそうだったけど、
今じゃ案外、普通にスコップの上で転がしているし。

そんな感じなので、
たのしがメダカにエサをあげると言い出した時は、
少し前にあげたばかりだったし、あんまりあげすぎると水が汚れて面倒くさいし、
丁重にお断りしたかったのだけど、
子どものやる気は重んじなきゃいけないと思い、よろしく頼むことにした。

がぜん、張り切るたのし。

そういえば、ここんとこずっとわたしがエサをやっていたから、
小さなエサ袋の口が、輪ゴムでキュッときつく、巾着型に結ばれている。

たのしはその輪ゴムを外すのに苦戦していた。

でも、わたしは見て見ぬふり。
そう、さっきも言ったけど、子どものやる気は重んじなきゃいけないかと。

ガサガサ、ガサガサ、ガサガサ…

たぶん、たのしはその小さな袋と輪ゴムに、ものすごく集中していた。
集中しすぎて、自分が一体何のためにそんなことをしているのかが、
わからなくなってしまったのだ、と思う。

その時、たのしが言ったことに、
わたしは生まれて初めて「目が点になる」という感覚を味わった。

「これ、たのしが食べるの?」

え?え?え?なんで?なんで?なんで?

でもわたしは、その質問がいかにも普通であるかのように、
それはメダカが食べるんだよ、と顔色ひとつ変えずに答えた。
そして、その場の空気が、そよとも言わず、
ただただ静かに流れていくのを感じていた。

よく言われるように、たしかに子どもはおもしろい。
でも、子どもの言動にいちいち
のけぞったり突っ込んだりしていたらヘトヘトになってしまうせいか、
ついつい、何でも平然と受け流すクセがついてしまった。

だけど、ふと、そんなことでいいのか、と思った。
せっかく、何てことない、ささいで愛おしいことがたくさん起きているのに。

少し反省し、それで今日はこうして書いてみたワケでした。

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