本を出します。 3
岩崎俊一
いまさら言うまでもないけれど、一本一本のコピーの背後には、それを書いたコ
ピーライターの人生がある。というのが大げさなら、そのコピーが生まれるに至
った、そのコピーライターなりのものの考えかた、感じかたというものがある。
仕事の打ち合わせの中では、そういうことをさんざん話しながら、コンセプトづ
くり、表現づくりを進めていくのだが、それをあらためて文章にすることは少な
い(仮に企画書の中に入れても、すべてを生々しく書くわけではなく、相当トリ
ミングしている)。
本をつくるにあたって、30数年間の仕事を見なおしていると、一本一本のコピ
ーのうしろから、思いがけなく、自分が何を考え、何にこだわり、どんなよろこ
びや哀しみをかかえて生きてきたかということがなかなか鮮やかに立ち上がるの
が見えた。
小学生の頃の病気のこと。
近所の男の子が食べていたおにぎり。
若くして死んだ母の思い出。
迷子になった娘がおこしたパニック。
電車で感動させてくれた女性の美しさ。
三歳になる犬への思い。
50年以上も前のこともあれば、数週間前のこともある。
僕のまわりで、日常におこる無数のでき事が、自分の上に降りかかり、からだの
奥深くにしみこみ、蓄積され、いつの間にかからだの一部となり、この自分とい
う人間をカタチづくっていた。
そんなことを感じたのがおもしろくて、ついペン(僕の場合はえんぴつ)を握ろ
うと思ったのだ。
本のタイトルは「幸福を見つめるコピー」。岩崎俊一における「コピーと人生」
の相関図。読んでいただけるとうれしいです。
それから、次回は、今年新人賞をとられました東急エージェンシーの沢辺香さん
です。
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