酔いどれ日記 1
大晦日の夜、父が言いました。
「2010年は年齢をあきらめないことにする」と。
明らかに、サントリーのCMの影響です。
すばらしー、さすがサントリー。しかし父に
それを指摘すると機嫌を損ねるので黙っていました。
「いまさ、全体的にみんな若くなってるじゃない。
オレも実年齢より若く見られるし、
体力も気力もまだ充分あると思うんだよね。
だから、2010年は年齢の7掛けの気分で
がんばろうかなって思うわけよ。どう?この考え」
いかにもオレのオリジナル的な言い方。
すっごくいいこと考えついた的な満面の笑み。
これは長くなる…と思いました。
うーむ、7掛け説はよくわからないけど、
いままでテレビや雑誌でさんざん言われているのでは…。
でも、それを指摘すると機嫌を損ねるので、
「いいね!実際、お父さんは若いもン」と
言ってしまいました。もちろん心にもないことを
言ったわけではありませんが、とりあえず
話を合わせて穏便にやりすごそうという気持ちがあり、
できればさらっと次の話題に移りたい気持ちもあり。
「71歳だから7掛けすると、だいたい50歳か。
いいねぇ、働きざかりだね」
いやー、お父さん、ちょっと無理があるような。
たしかに、三浦雄一郎さんをはじめ70歳過ぎても
現役バリバリの人は大勢いるけどさ…。
父が、前向きな気持ちになることは、
子どもとしてはうれしいことだから歓迎すべきです。
でも、どうして急にこんなことを言い出したのか。
昔から、山気が多く行動的というか精力的な人でしたが、
いま自分の衰えを実感しているのでしょうか。怖いのでしょうか。
考えること自体、酷な気がして、瞬時に反省。
そんな私の気持ちをよそに、
父はいろいろな知り合いの年齢を7掛けにしては、
「あの人もまだまだ若いじゃないの(笑)」とご機嫌です。
こういう時に下手に口を挟まないのが我が家の不文律。
母とアイコンタクトをとりながら、
和やかに大晦日の夜が更けていきました。
でも、改めて考えると、年齢をあきらめないって、
べつに高齢者だけに向けたものじゃないですね。
たとえば、転職とかも、そうじゃないですか?
前の会社に優秀な営業の女性がいたのですが、
彼女、33歳でコピーライターになりました。
本人曰く、できることはなんでもやったと。
仲間が喜んだのは言うまでもありません。
実は、私もコピーライターになったのは遅くて
29歳でした。26歳で上京し、宣伝会議の講座に通い、
3年たってようやく広告プロダクションに就職しました。
彼女と比べるとかなりラッキーな就職でしたが、
もう田舎には帰らないと決めていましたから、
なにか覚悟みたいなものはあったと思うんですよ。
自分との約束というか、自分への枷というか、
そういう切実さってチカラをくれるように思います。
なんかエラそうですが、コピーライターを目指していて
なかなか上手くいかない人がいるとしたなら、
私が言えるのはこれしかなくて…
とはいえ、父には、あまり切実にならず、
まわりを巻き込まず、やたらと機嫌を損ねずに
この1年を過ごして欲しいと願うばかりです。
大晦日の酒量 ビール大瓶の半分
日本酒 賀茂鶴ゴールド2合
磯自慢大吟醸3合
大晦日の肴 まぐろ赤身といかの刺身
山芋ぶつ切りとわさび漬け
数の子山盛り
静岡おでん
サラスパのドレッシング和え
煮物の残り
きゅうりと白菜のお新香
大晦日の酔度 紅白の歌手の年齢を新聞で見て
いちいち7掛けする父に
イラッとする
が、ぐっと我慢する